米国のクリーン・エネルギー分野のベンチャー企業が,活気付いている。2009年11月17日~18日に米カリフォルニア州シリコンバレーで開催されたクリーン・エネルギー関連イベント「Alternative Energy Innovations Fall 2009」には,約40社のエネルギー関連ベンチャーがプレゼンテーションを行った。同イベントは,米Dow Jones & Co.が主催したもの。太陽電池や蓄電池,風力発電,エネルギー管理,新型発電システム,バイオ燃料など,幅広い技術分野に関する話題があった。以下に,注目のベンチャー企業の例を紹介する。

太陽電池

低価格CIGSを標榜するApplied Quantum Technology社:米Applied Quantum Technology社(同社のWebサイト)は,既在の製造技術を採用することで価格を低減したCIGS(Cu,In,Ga,Se)型薄膜太陽電池を,2010年中に出荷開始予定という。同社は,スパッタリングを用いて製造した基盤上にCIGS型太陽電池を製造するプロセスに特徴を持つ。同社は「ワンステップ」と呼ぶ。このプロセスでは,製造ラインがそれほど大規模にならずに済むと言う。

 最初の製品は,既存のソーラー・パネルをそのまま採用した太陽電池モジュールである。2011年には,エネルギー変換効率を13.5%まで高め,1Wあたり1米ドル以下の価格で製品を販売したいとしている。2015年ころには,エネルギー交換効率を15.9%まで高め,1Wあたり0.5米ドル程度の価格が実現できると見込んでいる。

集光型太陽電池のCool Earth Solar社:米Cool Earth Solar社(同社のWebサイト)は,ポリエチレン・テレフタレート(PET)樹脂を用いた集光型太陽電池(CPV:Concentrator Photovoltaic)の開発を進めている。同社は,風船の要領で空気を詰め込んだ,ドーム型の透明樹脂フィルムを用いる。このフィルムを使って太陽電池に集光する。「集光型の場合,効率的に太陽電池を利用でき,コストも低減できる」(同社)。

 同社によれば,こうした集光型の装置の場合,小規模農家など,比較的小さな事業体に向いているという。同社はこのシステムで,1W当たり1米ドルのコストを達成できると主張している。

ホログラム技術を活用するPrism Solar Technologies社:米Prism Solar Technologies社(同社のWebサイト)は,薄膜Si型太陽電池上に,「Holographic Planar Concentrator(HPC)」と呼ぶPET薄膜樹脂を貼り付ける手法を手掛ける。ホログラム技術を用いたもので,太陽光を波長ごとに分けて利用できる。発電の効率が高い波長の光のみ活用するという。同社はこの手法によって,エネルギー利用効率を3倍に高めることが出来るとしている。「必要ない光を通過させることで,太陽電池が無駄に発熱することを防ぐことが出来,長寿命化に寄与する」(同社)という。

 現在,この技術を用いた太陽電池システムでは,1W当たり1.85米ドルで販売しているが,2015年までに1W当たり0.65米ドルまで下げられると主張している。

電池物質

米国内でのLi取得を目指すSimbol Mining社:米Simbol Mining社(同社のWebサイト)は,地熱発電プロセスにおいて取得する塩水からLi2CO3を生産するプロセスを手掛けている。このLi2CO3は,Liイオン電池市場に供給する。「我々は99.999%純度のLi2CO3を製造できる」(同社)。

 同社のプロセスは,地熱発電所の装置に設置して,塩水を取得し,そこからLiを精製する。従来のLi2CO3の製造プロセスに比較して,低コストでLiを取り出せると主張する。Simbol Mining社は,「米国はLi2CO3生産のトップになれるだろう」(同社)と主張する。

高速スクリーニングのWildcat Discovery Technologies社:米Wildcat Discovery Technologies社(同社のWebサイト)は,電池の電極などの候補物質を高速にスクリーニングするための技術を手掛けている。製薬における候補化合物のハイスループット・スクリーニング技術を,電池材料に応用したものだ。「我々は1週間で1000種類の候補材料を試験できる」(同社)。

風力発電

Google社から投資を受けたMakani Power社:米Makani Power社(同社のWebサイト)は,風力発電システムを手掛けている。従来の固定プロペラ型ではなく,全翼機に似た独特の形状の風車を用いる点に特徴がある。同社は米Google社から,1850万米ドルの投資を受けたという。

 同社は,2010年中頃までに,10kWの試作機を完成する予定である。2012年までには,同システムを使った大型発電施設の建設予定もあるという。