図1 セイコーエプソン機器情報化推進部 主事の眞篠国素氏のスライド。励振源に実測データを用いて遠方界電磁界解析を行ったが,電界強度のピーク周波数は一致したものの,ピーク値が実測と合わない。
図1 セイコーエプソン機器情報化推進部 主事の眞篠国素氏のスライド
励振源に実測データを用いて遠方界電磁界解析を行ったが,電界強度のピーク周波数は一致したものの,ピーク値が実測と合わない。
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 電子機器を開発するに当たり,放射電磁雑音(EMI)対策が難しくなっている。設計の早い段階でシミュレータなどを使って解析して対処すれば,設計自由度が高い分,対策しやすい上に,余計な対策部品などを省いてコストを抑えられる可能性もある。こうした上流設計におけるEMI対策の必要性や利点は既に広く認識されているが,全ての電子機器開発で必ずしも実行されている訳ではない。その理由の一つが,シミュレーションの難しさだ。新たにシミュレーションに取り組んだ場合,実際にはどのような困難が待ち受けているのか。

 セイコーエプソン機器情報化推進部 主事の眞篠国素氏が同社での一例を「2009 Japan ANSYS Conference」で紹介した。同イベントは,電磁場や回路,構造などの解析ソフトについてユーザー事例の紹介などを行うもので,アンシス・ジャパン,アンソフト・ジャパン,サイバネットシステムが主催し,2009年11月20日に東京で開催された。

 セイコーエプソンでは,放射電磁雑音を設計初期段階で推定するため,プリント基板などの平面電磁界解析に向けた電磁界シミュレータ「SIwave」(米Ansoft Corp.製品)を使い,遠方界解析を実施することを目標とした。あるチップにおいて,クロック周波数の第2高調波に当たる電磁雑音への対策部品を省くべく,プレーン共振を抑えることが目的だ。ところがSIwaveを使って遠方界解析を行ったところ,製品基板どころか,スリット上を信号線路が横切るという単純な評価基板であっても,シミュレーションが難しかったという。放射電磁雑音強度のピークが,シミュレーション結果と実測とで一致しなかったのである(図1)。

 原因として,眞篠氏が注目したのが励振源のモデル設定である。内部インピーダンスの周波数依存性を考慮できない点が大きく影響しているのではないかと推測した。実測波形をFFT解析したものを励振源として設定しても,シミュレーション結果のピーク値が正しくなかったからだ。