握手するキヤノン・内田氏とOce社・Schaaf氏
握手するキヤノン・内田氏とOce社・Schaaf氏
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 キヤノンは,オランダOce社の発行済み全株式を取得し,同社をキヤノンの連結子会社にすると2009年11月16日に発表した。今後,2010年1~3月をメドにOce社が上場しているEuronext市場で株式公開買付けを行う予定。買付け金額は,7億3000万ユーロ(1ユーロ=135円換算で985億5000万円,1株を8.6ユーロで取得した場合)としている。

 Oce社の中核商品は,商用印刷機や業務用大判プリンターなどハイエンド製品。一方,キヤノンはSOHO向け小型プリンターや企業向けのミッドレンジ製品で強いが,ハイエンドではラインアップが手薄だった。キヤノンは今後,ハイエンド製品の需要が伸びるとみており,Oce社の子会社化によりラインアップの拡充を図る。また,同社の子会社化に関しては,欧州における販売網の拡張や研究開発拠点の確立という意味合いもある。

 Oce社は現在,日本のメーカー3社と製品供給や技術供与に関する協力関係を構築している。例えば,2008年4月にコニカミノルタホールディングスとは,製品開発および販売に関する戦略的業務提携契約を結んでいる(Tech-On!の関連記事)。しかし,今回のキヤノングループ入りに伴い,これらの提携に関しては「再評価することになる」(Oce社CTO兼COOのAnton Schaaf氏)という。「再評価」の内容について同氏は明らかにしなかったが,契約済みの提携内容に関しては「その義務を履行する」(同氏)と述べた。ただし,当初の契約期間まで協力関係を継続するのか,それとも契約内容にある違約時の対応手続きを踏んででも(違約金の支払いなどが考えられる)提携を解消するのかといったことは,今後,それぞれの提携相手と「真摯に交渉していく」(同氏)という。

 以下,記者会見における質疑応答の概要を掲載する。回答者は,キヤノン代表取締役社長の内田恒二氏,同社常務取締役で映像機器事業本部長の中岡正喜氏,Oce社のSchaaf氏である。

――Oce社の子会社化で期待している効果は何か?

内田氏:キヤノンとOce社は(ラインアップや技術,販売網で)補完関係にあり,プラス効果はあってもマイナス効果はほとんどないとみている。従来,キヤノンは「グローバル展開」といいつつも,サービスやソフト,直販体制などの点で弱かった。間違いなく想定以上の効果が出ると思う。

――Oce社はキヤノン以外の日本のメーカーと提携を結んでいるが,今後こうした関係はどうなるのか?

Schaaf氏:我々は日本のメーカー3社と協力関係にあるが,今回の件に伴い,これらの関係は再評価することになる。(既に締結した契約内容にある)義務は履行する。今後は,(契約について)パートナーと話し合うつもりだ。

――「再評価」というが,具体的にはどういうことか。キヤノングループに入る以上,他社との提携を継続するのは無理なのではないか?

Schaaf氏:我々は正直でまじめな会社だ。そうした姿勢でパートナーと話し合っていく。

――Oce社がキヤノンと連結になるのはいつごろか?

内田氏:できるだけ早くと考えている。現在は(独占禁止法上の認可などの)審査中なので,先が見えてきた段階であらためて計画を話したい。恐らく,2010年第1~2四半期になるのではないか。少なくとも1年以内に進めたい。