Linuxを用いた携帯電話機向けソフトウエア・プラットフォームの開発・推進団体であるLiMo FoudationのExecutive Director,Morgan Gillis氏が来日し,都内で記者説明会を開いた。Gillis氏は,「日本や韓国の携帯電話事業者が採っているサービス指向のビジネス・モデルは,欧州や北米では認知されていなかった。事業者が独自のサービスに向けたアプリケーションを実装しやすいLiMo Foundationのソフトウエア・プラットフォームにより,欧米の事業者がサービス指向の携帯電話機を提供し始めた」などと語った(図1)。
Gillis氏は,これまで多くの欧米の携帯電話事業者は,料金プランや携帯電話機のハードウエア仕様しか差異化できる要素がなかったと指摘。その事業者がサービス指向になり始めた例として英Vodafone社の「Vodafone 360」を挙げた。Vodafone 360は,FacebookやTwitterといった各種のコミュニケーション・サービスと連動する電話帳機能を提供するほか,これらのサービスでやり取りしたデータや電話帳などのデータを携帯電話機とパソコンで同期できるインターネット・サービスである(Vodafone社の発表資料)。まず2009年内に欧州の8カ国でサービスを開始する。
このVodafone 360に対応する最初の携帯電話機として登場したのが,韓国Samsung Electronics Co., Ltd.製の「Vodafone 360 H1」および「同 M1」である(図2,図3)。LiMo Foundationが開発したソフトウエア・プラットフォームの第2版(リリース2.0)を採用した最初の機種であり,2009年10月30日に発売された。「日本や韓国で当たり前だったサービス指向の考え方が,世界の携帯電話事業者にとって良い手本となった」(Gillis氏)。
ソフトウエア・プラットフォームと携帯電話機を1社がすべて開発するiPhoneやBlackberry,ソフトウエア・プラットフォーム開発で1社が中心的な役割を果たすAndroidやWindows Mobileなどに比べ,「LiMoプラットフォームは,どの企業にも依存しないことが特徴」とGillis氏は説明した(図4)。具体的には,複数の携帯電話事業者や携帯電話機メーカーが共同で開発するため中立的なソフトウエア・プラットフォームになること,そのプラットフォームに各社が独自のアプリケーション・ソフトウエアやサービスを実装しやすいことが,他のプラットフォームにない利点だと主張した(図5)。