ディスプレイの画質問題を討議するセッション「テレビ画質を斬る。『いまそこにある画質の危機』をいかに突破するか」が,「FPD International 2009 Forum」(10月28~30日,パシフィコ横浜)の2日目に開催された。昨年までは実機評価のシュートアウトとともに開催していたが,今回は,画質討議に徹した。

目の前にある“画質の危機”を議論

 筆者は「今後の画質の重要課題」というテーマで,問題提起をした。まず,「いまそこにある画質の危機」というテーマで,

(1)階調の危機――「数百万:1」の超高コントラストに,ディスプレイの階調はついていけるか。
(2)色の危機――勝手に色範囲を広げて良いのか。今のままの色範囲で良いと思っているのか。
(3)視野角の危機――VA液晶は相変わらず悪い。大画面ではもっと悪い。IPS液晶も良いわけではない。

という,三つの危機を提示した。

 これに対して,東芝デジタルメディアエンジニアリングの住吉肇氏(「メタブレインプロ」の開発者)は「コントラストが上がったとしても,人の弁別を考えれば,階調は12ビットあれば十分。むしろソース側が問題。パッケージ・メディアでは4:2:0の8ビットが問題だ」と,メーカー側の立場から言った。

 筆者は,「薄型テレビの画質は進化したが,それでもブラウン管は超えられない」と述べた。日立コンシューマエレクトロニクスの“絵づくりテクニシャン”,青木浩司氏は「確かに,ブラウン管の階調には感心する。ブラウン管は味のある映像を出していた。それは何だったのかを,今考えなくてはならない。階調を出していくのはわれわれの使命」と言った。

 「われわれは今,心地良いテレビを作ろうというテーマを掲げている。心地良さって何だろう。店頭用の明るい“スーパーモード”では,なかなかそうはいかない。店頭でテレビをぱっと見て買う人は,今は少ない。クチこみで買う人が多い。『ギラギラはいやだね』という人が増えてきた。だから,いかに気持ち良さを仕込むことが大事になっている。それには階調再現がとても重要だ」。

 パナソニックでプラズマ・パネルを開発している谷口啓成氏は「5月のNHK技研公開で103型の4K×2Kディスプレイを展示したが,そこでは絵づくりをしなくても感動する映像を作ることができた。スーパーハイビジョンの映像をダウン・コンバートしている4K×2K画像は,メリハリをつける絵づくりすると邪魔になる。切っていくとすごく臨場感があった。ここに画質の新しい可能性を感じた」と語った。