Hi-Z Technology社の高効率熱電変換素子の試作品
Hi-Z Technology社の高効率熱電変換素子の試作品
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試作品を手にするBass氏
試作品を手にするBass氏
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 米Hi-Z Technology, Inc.は,「Green Device 2009」で,同社の主力製品である300~500℃で動作する熱電変換デバイスに加え,エネルギー変換効率が非常に高い「量子井戸リング・コンバーター」の試作品を出展している(関連記事)。

 この高効率熱電変換素子は,p型とn型の薄い量子井戸型半導体フイルムを26組,リング状につないだもの。リングの外径が1インチ(約2.54cm)で,厚みが0.005インチ(約100μm)と非常に薄い。基板には「Kapton」という米Du Pont社のポリイミド製フイルム製品を用いた。300℃まで温度耐性があり,高温側の温度を300℃,低温側を50℃にした場合に,195mWを発電できるとする。

 実は実測値としては,p型とn型の組を2組接続した素子のデータしかまだない。この結果を26組のリングに外挿することで,40℃の温度差がある場合に出力4.82mWを電圧2.93Vで発電できる見通しが得られたとする。これは,無次元の性能指数であるZTの値で3弱,エネルギー変換効率が温度差200℃の場合に約14%という非常に高い値に相当する。「2年後にはZT=4,効率では20%にできる見通し。さらに新しい量子井戸材料を使えば効率35%も狙える」(Hi-Z Technology社 Vice PresidentのJohn C. Bass氏)とする。

 一方,同社の現在の主な製品であるBiTe系熱電変換素子のZT値は約0.8,効率は5%だという。現時点ではZT値が1を超えるだけで話題になるほどで,ZT=4という非常に高い値は,以前,米Massachusetts Institute of Technology(MIT)が「超格子構造」の半導体材料で達成したと発表したことがあるぐらいだ。ただし,これには「再現性が確認されていない」(国内のある研究者)と批判がある。

 今回の量子井戸構造も「超格子構造の一種」(Hi-Z社のBass氏)。具体的には,バンドギャップが大きい半導体材料で,バンドギャップが小さい材料の薄膜をサンドウィッチ状に挟んだ構造を指す。電子を薄膜層に閉じ込めた格好になり,「2次元電子系」などとも呼ばれる。

 今回は具体的には,熱電変換素子向けとして,(1)Si/SiCとB4C/B9C,(2)Si/SiGeとB4C/B9C,(3)n型とp型のSi/SiGe,といった3種類の量子井戸型半導体材料を用いた。特に(1),次いで(2)が高い特性を示すという。