LBLNが作製した音のハイパーレンズ
LBLNが作製した音のハイパーレンズ
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 米エネルギー省(DOE)管轄の研究機関であるLawrence Berkeley National Laboratory (LBNL)は,メタマテリアルを用いて音の「ハイパーレンズ」を開発したと発表した。2009年10月25日付けの学術誌「Nature Materials」に論文が掲載された。超音波を一点に集音して胆石やガン細胞などを破壊する治療や,より高精度な超音波診断,潜水艦のソナーなどに向けた高性能集音器,物体の非破壊検査などの実現に応用できるとする。

ハイパーレンズとは,一般のレンズでは失われる「エバネッセント波」を,一般の伝播する波と合わせて焦点に「集光」または「集音」できるレンズ。「スーパーレンズ」とも呼ばれる。一般のレンズでは原理的に,焦点の大きさを波長程度より小さくすることができないが,ハイパーレンズであれば,焦点の大きさを理論的にはそれよりはるかに小さくすることが可能になる。

 今回,LBNLが作製したのは,「フィン」と呼ぶ長さ19.1cmの細長い黄銅製の板を36本使って180度の扇状に並べたもの。中心から内径2.7cmまでは何もなく,そこから外径21.8cmまでフィンが伸びている形状になっている。厚みは3mmである。

 LBNLによれば,このハイパーレンズは,焦点の大きさを音の波長の6.7分の1にまで小さくできているとする。加えて,従来,このメタマテリアルの課題とされていた,対応する周波数帯域の狭さや損失の大きさを大きく改善したという。

「この技術を医療の超音波診断に応用できれば,体内での透過性が高い,低めの周波数の音を使って,より小さなガン細胞の発見や大きな組織の一部を詳細に見られるようになる」(LBLN)という。