プラント所在地
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 東レは,世界最大の膜法海水淡水化プラント向けに,逆浸透膜(RO)エレメントを受注た。同プラントは,アルジェリア第2の都市オラン近郊のマグタに建設され,シンガポールのHyflux社が受注。25年契約でプラント設計/建設/運転管理を行う。東レは,2010年にRO膜エレメント納入する。プラントの稼働開始は,2011年。同プラントの生産水量は,50万m3で,現在稼働中の最大プラント33万m3(イスラエル)を抜いて,世界最大規模のプラントとなる。

 マグタ海水淡水化プラントに納入するRO膜エレメントは,世界最高レベルのホウ素(B)除去性能を持ちながら省エネルギ性と高造水量を確保した新製品。これまで,Bを残さず除去するためには,高分子膜の孔径は極小にすることが必要で,そのため造水量が犠牲になっていた。同社が新たに開発した技術は,サブナノメーター(1/10兆mm)の孔径など微細構造を制御することで,高い造水能力を持ちながら,Bの除去率を高めることに成功したもの。

 世界中で深刻になりつつある水不足・水質悪化といった問題を抱える諸地域の中でも,中東/北アフリカ地域は,最も深刻な地域の一つである。その中で,アルジェリア政府は海水淡水化による問題解決に積極的で,10万~20万m3/日クラスの巨大プラントを次々に建設しており,海水淡水化の最大級の市場となってきている。同社は,アルジェリアで2008年に稼働を開始した,アフリカ最大のハンマ海水淡水化プラント(20万m3/日)などにRO膜エレメントを納入しており,今回のマグタプラントが3件目の実績。マグタ海水淡水化プラントの造水量を生活用水に換算すると約200万人分に相当し,同社がRO膜エレメントを納入した3プラントの合計では320万人分,アルジェリア国民の約1割の生活用水に相当する。

 RO膜市場は,世界的な水不足の深刻化や環境に配慮した水資源確保の要請などから,年率12%以上で拡大を続けている。とりわけ海水淡水化用途では,プラント規模の拡大もあり,市場が年率30%で拡大している。地域的には,今後も米国/欧州/中東・北アフリカと中国での着実な成長が予想されている。用途的には,海水/かん水の淡水化プラント用途に加えて,ボイラー用水製造などの産業用途とともに,都市下廃水再利用などの新しい市場が育ちつつある。