図1 左から洗濯乾燥機「NA-VR5600」,冷蔵庫「NR-F504T」と「NR-F601XV」。洗濯乾燥機NA-VR5600の発売日は2009年9月26日で,定格容量は洗濯9kg,乾燥6kg。価格はオープンだがパナソニックによる想定価格は30万円前後。冷蔵庫の発売日は2009年10月10日で,定格容量はNR-F504T501L,NR-F601XVは603L。オープン価格で想定価格は順に25万円前後と32万円前後。NR-F601XVは除菌などに効果があるとする「ナノイー」発生装置を搭載する。
図1 左から洗濯乾燥機「NA-VR5600」,冷蔵庫「NR-F504T」と「NR-F601XV」。洗濯乾燥機NA-VR5600の発売日は2009年9月26日で,定格容量は洗濯9kg,乾燥6kg。価格はオープンだがパナソニックによる想定価格は30万円前後。冷蔵庫の発売日は2009年10月10日で,定格容量はNR-F504T501L,NR-F601XVは603L。オープン価格で想定価格は順に25万円前後と32万円前後。NR-F601XVは除菌などに効果があるとする「ナノイー」発生装置を搭載する。
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 パナソニックは,センサを使って無駄な運転を極力減らすことで,消費電力量を抑えることを前面に打ち出した白物家電をシリーズ化する。センサを多用して利用状況を把握し,その状況に応じて最適に稼働させることで,快適性や利便性は維持しつつ無駄を省く。従来は,検出用のセンサを搭載していない項目について,基本的に最大値で稼働させていたため,無駄が生じていた。センサを増やすことで利用状況を把握する精度を高め,より細かに制御することで省エネ性を向上させる。

 同社は,センサを多用して無駄を省く機能を「エコナビ」と名付けた。その先鞭と言える製品としては,2005年に発売した温水洗浄便座「瞬間あったかトワレ」がある。この便座などでの成功を踏まえて,利便性を落とさず省エネ性を高めた製品へのニーズは高いと判断し,エコナビを白物家電全体にまたがる機能のキャッチフレーズとして展開することにした。その製品の第1弾として,洗濯機2機種と冷蔵庫6機種を発表した(ニュース・リリース1ニュース・リリース2)。エコナビに相当する機能を備えた既発表の5製品(食器洗い乾燥機,掃除機,蛍光灯,エコキュート,温水洗浄便座)にも,新たにエコナビのキャッチフレーズを付加しており,該当製品は7製品となる。近日中に発表するエアコンもエコナビ機能を搭載する予定で,同社はエコナビを白物家電に共通する独自の特徴として展開する。ナショナルからパナソニックへのブランド名変更から約1年,「省エネのパナソニック」としてのイメージ定着を狙う。

「省エネ+省エネ」で白物シェア30%超を狙う


 製品の壁を越える統一テーマとして「省エネ」を選び,基本的な省エネ性向上の上に,さらに目新しい省エネ性向上「エコナビ」を積み上げる――パナソニックがこうした戦略で狙うのは,「買い替えサイクル需要」と「省エネニーズ」の獲得だ。

 同社によれば,例えば冷蔵庫は新規性に富んだ機能が少なく,一般に10年程度とされる買い替えサイクルの長期化が見られるという。日本市場では,1994~1996年の販売台数が1480万台だったのに対して,2005~2007年の販売台数は1278万台と,約200万台減少した。洗濯機の場合は,節水性が高く洗濯乾燥用途に向く「斜めドラム式」が登場したことで,1994~1996年の販売台数1140万台に対して1320万台と約200万台増加した。

 最近の環境意識の高まりもあり,省エネ性向上については依然として高いニーズがある。しかし,生活を変えてしまうような目新しい機能がなければ買い替えサイクルを前倒しすることはできない。そこで,同社はエコナビ機能によって省エネ性能自体に目新しさを持ち込み,買い替えサイクル需要と省エネニーズの両方を汲み上げること狙う。複数の家電製品で同じキャッチフレーズを使うことで,ある製品の省エネ性能を評価したユーザーが,別の家電製品を買う確率を高める効果も期待する。白物家電全体で国内市場の30%超のシェア獲得を目指すとする。

水のにごりと電離度で汚れを判定


 今回発表した洗濯乾燥機と冷蔵庫では,従来搭載していたセンサとは異なるセンサを追加することで,それぞれ汚れや冷却負荷を精度よく把握できるようにした。

 「NA-V5600」などの洗濯乾燥機では,エコナビ機能実現のため,従来の(1)布量センサに加えて(2)泥汚れセンサ,(3)汗汚れセンサを追加した。これら3つのセンサのデータから,汚れ具合を判断し,洗い工程の水量と時間,すすぎ工程の水量を決定する。消費電力を最大10%,水量を最大7%,洗濯時間を最大15%削減できるとする。

 布量センサには洗濯槽駆動用モータの電流値,泥汚れセンサには水のにごり具合を判定する赤外線センサ,汗汚れセンサには水の電離度を測定する電極センサを採用した。苦心したのは,複雑な汚れの組み合わせと,それぞれに合わせた最適な運転モードの設定だ。汚れは百数十通りに判定し,その1/4程度に当たる運転モードに振り分ける。「洗濯機は,まず汚れを落とすことが大切」という,基本性能に対するユーザーの要望に応えつつ,省エネ性を両立する。

 従来のいわゆる「おまかせコース」の場合,布量センサを使って洗濯物量は判定するものの,メーカーの想定する最大汚れを落とせる洗濯を実行するため,汚れが少ない場合などは水や電気,時間が無駄になっていたという。同社では以前,光センサを使った汚れセンサを搭載した機種を扱っていたが,あくまで「汚れが落ちたことを確認する」ためのもので省エネ性向上には活用していなかった。また,光センサだけは水のにごりを生じない汗や果汁といった水溶性の透明の汚れには反応せず,不十分な判定になるという課題があった。

 「XVシリーズ」などの冷蔵庫では,従来搭載する(1)各ドアの開閉スイッチに加えて,本体前面の操作パネル部分に(2)照度センサを搭載した。2種類のセンサのデータから,冷蔵庫の開閉の少ない就寝時間帯と外出時間帯を予測する。これらの時間帯には冷却能力を抑えることで無駄な冷やし過ぎをなくし,消費電力を削減する。2種類のセンサを使うことで,予測精度が高められるとする。同社の実測では,冬季の利用環境で約15%,夏季の利用環境で約12%の消費電力量を削減できたという。

 それぞれについて,JIS規格や日本電機工業会で定められた評価方法における消費電力量などについても,2008年に発売した従来製品に比べて低減を図っている。

 基本的な消費電力量などの削減方法は,従来通り地道な技術の積み重ねだ。例えば,洗濯機は定格6kgの衣類を洗濯乾燥した場合,使用水量は2L少ない56Lに,消費電力量は100Wh少ない860Whとした。水量を減らすためには,洗い,すすぎ工程での水流を工夫した。消費電力量の削減は,乾燥工程で利用する温風用ファンの羽根形状や制御方法の工夫,風の流路抵抗の削減,除湿用ヒート・ポンプ・ユニットの熱交換器を流れる冷媒の流量制御の工夫により実現している。

 冷蔵庫は圧縮機の気筒容量を10cc(mL)から12ccとして,回転数を抑えて機械的な損失を低減するなどして,COPを約6%向上した。気筒容量の大きいピストンで発生する振動を抑えることで,実現したという。また,冷却器については冷媒管とフィンの熱伝導率を高めるコーディング材を採用し,フィン形状と枚数を増やすことでフィンの面積を2割増加させ,効率を高めている。この結果,「NR-F504T」は年間消費電力量330kWhを達成した。

図2 洗濯機は本体左下,循環用ポンプに接続するホース部分に,泥汚れセンサ(指で指している部分)と汗汚れセンサ(指で指している部分の右側にある,二つの白いコネクタで接続された電極)を備える。
図2 洗濯機は本体左下,循環用ポンプに接続するホース部分に,泥汚れセンサ(指で指している部分)と汗汚れセンサ(指で指している部分の右側にある,二つの白いコネクタで接続された電極)を備える。
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図3 従来の冷蔵庫との温度の違い。従来は実は冷やし過ぎの時間が生じていた。
図3 従来の冷蔵庫との温度の違い。従来は実は冷やし過ぎの時間が生じていた。
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図4 冷蔵庫の冷却器の一部。写真左は今回の製品に搭載された冷却器。フィンの面積を増やすため,冷媒管を通すためのフィンの抜いてある部分の形状が「鉄アレイ」のような複雑な形になっている。青色はコーティングによるもので,このコーティングにより,冷媒管とフィンの間の熱伝導率を高める。写真右は従来の冷却器。
図4 冷蔵庫の冷却器の一部。写真左は今回の製品に搭載された冷却器。フィンの面積を増やすため,冷媒管を通すためのフィンの抜いてある部分の形状が「鉄アレイ」のような複雑な形になっている。青色はコーティングによるもので,このコーティングにより,冷媒管とフィンの間の熱伝導率を高める。写真右は従来の冷却器。
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