ソニー・コンピュータエンタテインメント エクスターナルプロダクション部 エグゼクティブプロデューサーの池尻大作氏
ソニー・コンピュータエンタテインメント エクスターナルプロダクション部 エグゼクティブプロデューサーの池尻大作氏
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みんなのスッキリ初期版における「掃除機」。特殊なアイテムなどもないシンプルな画面になっている。
みんなのスッキリ初期版における「掃除機」。特殊なアイテムなどもないシンプルな画面になっている。
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製品版のみんなのスッキリにおける「掃除機」。パワーアップや毒など特殊なアイテムが置かれるなど,ゲーム性が高められている。
製品版のみんなのスッキリにおける「掃除機」。パワーアップや毒など特殊なアイテムが置かれるなど,ゲーム性が高められている。
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 2009年10月にソニー・コンピュータエンタテインメント(SCEJ)が発売予定の「みんなのスッキリ」は,当初「無限プチプチ」を目指していた――。「CESA Developers Conference 2009(CEDEC 2009)」のセッション「『みんGOL』『みんテニ』次の一歩は」というセッションで,同社エクスターナルプロダクション部 エグゼクティブプロデューサーの池尻大作氏が明らかにしたものだ。

 まずこれまでの「みんなの」シリーズを振り返り,「初心者でも入りやすく,シリーズのファンでも満足できるよう奥が深いゲームとして実現できた」(池尻氏)ことにより,シリーズの成功に結びついたと説明した。その系譜を受け継ぐみんなのスッキリも,誰でも遊べることを重視した作品であるという。

 同社のポータブル・ゲーム機「PSP」は比較的ゲームとして難易度が高く,遊び応えのあるタイトルが売り上げ上位を占めている。「しかし,ケータイ・ゲームの普及などを見ても,カジュアル・ゲームの需要は必ずある」(池尻氏)。そこでみんなのスッキリを「PSPを代表するカジュアル・ゲーム」にするため,スポーツという間口を取り払ったという。初期のコンセプトは,生理的な気持ちよさがあって,いつでも止められるけどやり出すと止められず,腕前とは関係なく楽しめるもの。「一言で言えばゲーム機を使った無限プチプチを作ろうとした」(池尻氏)。このような比較的単純なゲームを12種類提供することで,長く楽しんでもらおうというのが基本アイデアとなった。

 開発初期版では,(1)ルールをシンプルにする,(2)ゲームを簡単にする,(3)ゲーム・オーバーをなくす,といった方針が採られた。しかし実際に作ってみると,単純ゆえに飽きも早かった。複数のゲームから成るため,人によって支持するゲームが違ったことから方向性が見いだしにくかったという。例えば掃除機をモチーフにしたゲームでは,ひたすらゴミを吸い取るといった具合だ。

 そこでフェーズの節目ごとに,調査会社によるユーザー・テストを実施した。どのゲームから始めるか,プレイ時間の長さ,プレイ前後の印象の変化などを聞き取ると同時に,実際に遊んでいる様子も観察した。その結果として,開発初期版に盛り込んだ方針のうち,(2)は難易度の変化がないため単調となり,(3)はクリア目的がないためユーザーが不安を感じるという結果が出た。全体としては,既存のゲームのルールに近いものが高評価を得たという。

 これに基づきコンセプトを見直し,初めはシンプルだが気を抜いた操作をするとミスとなるようにしたり,ステージの概念を導入したりといった変更が成された。前述の掃除機をモチーフにしたゲームでは,ゴミの中にアイテムがあり,掃除機の吸引力がパワーアップされたり,毒を吸い込むとプレーヤーの生命力が低下し,低下しすぎるとゲームオーバーするといった形に変わった。

 このようなユーザー・テストを実施するうえで,単にコンセプトを考案するだけでなく,実際に作り込んだものを持ち込むことが重要であり,悪い評価が出たら「制作途中だから評価されないのではなく,ゲーム性が支持されなかったと判断すべき。そのためにも,きちんとしたものを作ってテストに臨まなければならない」(池尻氏)とした。