インテルは2009年8月20日につくば市の本社で,国内報道機関を対象にしたテクノロジプレス・セミナーを開催し,最近の事業の状況や製造技術のロードマップなどを紹介した。登壇したのは,同社の取締役 技術開発・製造技術本部(Technology & Manufacturing Group:TMG)本部長の阿部剛士氏である。

 同氏はまず,TMGの紹介を行った。TMGはプロセス技術の開発と,製造を担当する部門で,米Intel Corp.のワールド・ワイドの組織では最大の人員をかかえる。Intelは全世界で8万4000人の従業員を擁し,その半分の約4万2000人がTMGに所属する。

フラッシュ・メモリーほどではないにしろ,マイクロプロセサの平均単価はどんどん下がっている 阿部氏(右端)が見せたスライド。
フラッシュ・メモリーほどではないにしろ,マイクロプロセサの平均単価はどんどん下がっている
阿部氏(右端)が見せたスライド。
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2009年の設備投資と研究開発投資は2008年と同等 阿部氏(右端)が見せたスライド。
2009年の設備投資と研究開発投資は2008年と同等
阿部氏(右端)が見せたスライド。
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 日本法人のインテルには,TMGの従業員は約100名いる。米国を除くと「TMGでは最大の人員数」(阿部氏)である。これは,「Intelワールド・ワイドで使う半導体製造装置や材料の多くを,日本企業から調達しているため」(同氏)という。「この意味で,日本の製造装置メーカーや材料メーカーは勝ち組。一方で,日本の半導体メーカーは苦戦を強いられている」と加えた。

 次に,阿部氏は,最近のIntelの事業の状況を紹介した。2009年第2四半期の売上高は80億2400万米ドルで(Tech-On!関連記事1),対前年同期比では15%減少したものの,前期比では12%増えて「底打ちした」と述べた。

平均単価の下落が悩みの種

 09年Q2の平均単価は,前四半期に比べて低下したものの,事前の予想よりも下落幅は小さかった。ただし,Intelにとっては,平均単価下落の傾向は最も大きな問題であるとした。一方で,「今後,高い成長率が期待されるのは,欧米の先進国よりも,アジアを中心とした新興国で,平均単価の上昇は今後もあまり期待できない」とも述べた。

 それでも「企業としては,新興市場に行かないという選択肢はない」(同氏)。例えば,その対策として,Intelは,ここ数年,サプライチェーン・マネジメントに力を入れてきたという。その成果として,米AMR Research, Inc.が選ぶ,優良サプライチェーン・マネジメントでベスト25になったことを挙げた(なお,トヨタ自動車は10位で,1位は米Apple, Inc.)

 阿部氏は,設備投資や研究開発投資についても説明した。Intelは2008年に52億米ドルを設備投資に,57億米ドルを研究開発投資に充てた。2009年にはどちらも同額程度を投資予定だという。同氏は,米IC Insights, Inc.の設備投資に関するレポートを引き合いに出し(Tech-On!関連記事2),2009年に10億米ドル以上の設備投資をする半導体メーカーはIntelを含めて3社に減少したことを紹介した。そして,今後,年間10億米ドル以上の設備投資に耐えられる半導体メーカーが増えることは期待できないことを匂わした。