図1 液晶テレビなどの普及率
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図2 購入の理由
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図3 購買チャネル
図3 購買チャネル
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図4 各国企業の製品に対するイメージ
図4 各国企業の製品に対するイメージ
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図5 世帯年収ごとの世帯数
図5 世帯年収ごとの世帯数
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 野村総合研究所は2009年8月4日,「インドの富裕層市場と日本企業の戦略方向」と題した報道機関向けの説明会を開催した。同社 グローバル戦略コンサルティング二部 上級コンサルタントの岩垂好彦氏が登壇し,インドにおける富裕層市場の動向や,インド市場での販売戦略などについて講演した。

 今回,世帯年収が50万ルピー(約100万円)以上の富裕層を対象に,1.「都市・地域差」,2.「ブランドへの意識」3.「購買チャネル」4.「日本製品に対するイメージ」について調査した結果を報告した。調査では首都デリーと人口の多いムンバイ,そして住民の平均的な学歴が高いとする地方都市チャンディーガルで,訪問式のアンケートを実施した。さらに,この3都市にバンガロールとジャイプールの2都市を加えた計5都市でグループ・インタビューを実施し,結果をまとめたという。

 1の都市・地域差に関しては,都市ごとに,家電の普及率や購入意欲,購入時における判断材料に違いがあった。液晶テレビやデジタル・カメラの普及率はデリーやムンバイが高く,チャンディーガルではいずれも普及率が低かった。一方,エアコンや自動車の普及率の差はほとんどない(図1)。

 購入意欲に関しては,例えば液晶テレビの場合,所有者が少ないチャンディーガルでは世帯年収が高い富裕層ほど購入意欲が高まる,といった傾向がみられたとする。液晶テレビを購入する際の判断材料は都市ごとに異なる。デリーでは機能面を重視し,ムンバイでは流行している製品を購入したいとの姿勢が顕著に現れているという(図2)。

 2のブランド意識については,岩垂氏によれば,従来,インド人は一度気に入ったブランドができると,そのブランドで統一する傾向がある,との見解が一般的だったという。1991年まで閉鎖的な市場だったため,インドの国内製品で消費者の選択肢が少なかったことが一因にあるとする。ところがこの状況は,1991年以降,インド経済が自由化路線へと舵を切るととともに変わったとする。

 液晶テレビや自動車,エアコンといった高価なものは,製品の性能や品質を重視し,デジタル・カメラといった比較的安価な機器は,家族や友人の薦め,広告などによって購入を決めるという。

近所のお店で購入

 3の購買チャネルは,近所の店を利用する場合が多い。例えば液晶テレビの場合,デリーとムンバイ,チャンディーガルはいずれも近所の店で購入すると答えた比率が高かった。一方,ショッピング・モールや大手量販店,地域の量販店などで購入する比率は低かった(図3)。ショッピング・モールは,映画や外食,ウインドウショッピングのために訪問する場合が多いという。

 4の日本製品に対するイメージは,ほかの国に比べて,「製品の性能が良い」,「技術的に先進的」,「品質が高い」,といった意見が多かったものの,「販売後のサービスが良い」,「広告宣伝が優れている」との回答は少なかった(図4)。加えて,日本企業として正しく認識されている企業も少ないという。例えばソニーの場合,約20%の回答者が他国の企業と認識している。

 なお,2005年の調査時で,世帯年収が50万ルピー以上の富裕層は490万世帯,このうち,100万ルピー以上は170万世帯だった。20万~50万ルピーで1320万世帯,9万~20万ルピーで5330万世帯である。これが2010年には50万ルピー以上の富裕層で770万世帯,このうち,100万ルピー以上は290万世帯へと増加すると予測する。20万~50万ルピーの世帯は2590万世帯,9万~20万ルピーの世帯は7920万世帯と,増加が著しい(図5)。