連結決算を発表するソニー代表取締役副社長でCFOの大根田伸行氏
連結決算を発表するソニー代表取締役副社長でCFOの大根田伸行氏
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 ソニーは,2009年度第1四半期(2009年4~6月期)の連結決算を発表した。売上高は1兆5998億5300万円(前年度同期比19.2%減),営業損益は257億円の損失(前年度同期は734億3900万円の利益)で,減収・営業赤字となった。景気後退による売り上げの減少と円高の影響が大きいという。

 同社では,持分法による投資損益を営業収益(損失が出た場合はマイナスの収益)として,また人員削減などに伴う構造改革費用を営業費用として計上しており,営業赤字に転落した背景にはこれらの項目での影響もあった。具体的には,持分法による投資損益が151億円の損失,構造改革費用が339億円である。これらによる影響を除いた「調整後営業損益」は233億円の利益となっている。

 また,米ドルやユーロに対して円高が進行したことも,業績悪化に響いた。同社代表取締役副社長でCFOの大根田伸行氏によれば,減収分の4割,営業損益悪化分の7割は為替の影響によるものだという。

水面下で原価改善も着々と

 事業セグメント別(セグメント間の取引を含む)業績は以下の通りである。AV機器や電子部品・半導体などを扱う「コンスーマープロダクツ&デバイス」セグメントでは,売上高が7734億円(前年度同期比27.3減),営業損益が20億円の損失(前年度同期は361億円の利益)だった。主力の液晶テレビやデジタル・スチルカメラ,デジタル・ビデオカメラなどが大幅な減収である。ただし,販売費・一般管理費の削減や原価改善といった「体質改善」も特にカメラ製品で進んでいるという。

 同セグメントにおける営業利益増減要因のうち,増加要因としては「販売費・一般管理費の減少」が337億円,「原価率の改善」が305億円で,計642億円となっている。一方,減少要因としては「持分法による投資損益の悪化」が44億円,「固定資産の減損・除売却損(純額)の増加」が60億円,「減収による売上総利益の減少」が440億円,「為替」が479億円で,計1023億円。差し引き381億円の悪化である。

顧客が設備投資を控える傾向に

 PCやゲーム(ハードおよびソフト)などを扱う「ネットワークプロダクツ&サービス」セグメントでは,売上高が2468億円(前年度同期比37.4%減),営業損益が397億円の損失(前年度同期は46億円の利益)だった。ゲームに関しては,2009年度上期中は魅力的なソフトの新作がそれほどなかったことから,それに引きずられる形でハードの売り上げも伸びなかった。具体的には「PS3」「PSP」は販売台数が落ちている。ただし,「PS2」は欧州や米国で値下げを行ったことから,売り上げが持ち直しているという。

 放送・業務用機器やディスク製造が含まれる「B2B&ディスク製造」セグメントでは,売上高が991億円(前年度同期比28.4%減),営業損益が124億円の損失(前年度同期は89億円の利益)だった。放送事業者が設備投資を控えていることから,事業環境が悪化しているという。また,地上デジタル放送への移行に伴う設備投資も,大手放送事業者ではほとんど終わっており,今後も大幅に改善する見込みはない。ディスク製造に関しては,Blu-ray Disc(BD)関連は比較的好調に推移しているという。

 2009年度通期の業績見通しに関しては,期首発表からの変更はない。売上高は7兆3000億円(前年度比6.0%減),営業損益は1100億円の損失(前年度は2278億円の損失)である。

事業セグメントを変更

 なお,同社は2009年4月1日付で実施した機構改革に伴い,米国会計基準に従って,2009年度から事業セグメント変更した。旧セグメントは「エレクトロニクス」「ゲーム」「映画」「金融」「その他」だった。新しいセグメントは「コンスーマープロダクツ&デバイス(CPD)」「ネットワークプロダクツ&サービス(NPS)」「B2B&ディスク製造」「映画」「音楽」「金融」「ソニー・エリクソン(持分法投資損益)」「その他」である。主な変更点は以下の通り。

  • 旧「エレクトロニクス」セグメントから「PC・その他ネットワークビジネス」分野を切り出して,旧「ゲーム」セグメントと統合したのが新「NPS」セグメント。「PC・その他ネットワークビジネス」分野で扱っている製品は,PC,デジタル音楽プレーヤー,パーソナル・ナビゲーション・システムなどである。
  • 旧「エレクトロニクス」セグメントから「B2B」分野と「ディスク製造」分野を切り出して統合したのが新「B2B&ディスク製造」セグメント。「B2B」分野に含まれるのは,放送・業務用カメラやモニタなど。ディスク製造事業は,主にBD,DVD,CDなどの光ディスクの製造を指している。
  • 新「CPD」セグメントに含まれる主な製品分野は,テレビ,デジタルイメージング(デジタル・スチルカメラ,デジタル・ビデオカメラ),オーディオ・ビデオ,半導体,コンポーネントである。
  • ■変更履歴
    記事掲載当初,第1段落末尾で「景気後退による売り上げの減少と円安の影響が大きいという」,第3段落冒頭で「また,米ドルやユーロに対して円安が進行したことも,業績悪化に響いた」と,業績悪化の要因として「円安」とありましたが,いずれも「円高」の誤りでした。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。 [2008/08/03 11:45]
    新旧セグメントの比較
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