日本ケイデンス・デザイン・システムズのプライベート・イベント「DA SHOW/CDN Live! Japan 2009」(7月16日と17日に東京で開催)などのために,来日したLip-Bu Tan氏(米Cadence Design Systems, Inc.,President & CEO)に話を聞いた。何事にも派手だった前President & CEOとは対照的に,手堅いという印象だった。

Lip\-Bu Tan氏 日経BPが撮影。
Lip-Bu Tan氏
日経BPが撮影
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 前社長兼CEOのMichael Fister氏は米Intel Corp.の出身で,ユーザー代表ということをウリモノにどんどんと新企画を打ち出した。今,思えば,米国経済が昇り調子の時期とも重なり,“いけいけ”の雰囲気がCadenceにもEDA業界にもあった。Fister氏は,例えば,ソフトウェアから製造まで幅広い分野での製品提供に燃えた。

 しかし,落ち着いて考えてみれば,これには無理があった。Intelは先端ユーザーかもしれないが,他社ではIntelと同じようにはEDAに投資できない。そんなに見せられても普通のユーザーは買えない。Cadence内でも対応しきれない。消化不良が起こってしまった。そんなこんなで混乱していたころ,Fister氏は米Mentor Graphics Corp.の買収で起死回生を図ったが失敗,米国経済も不調になり,同氏の路線は完全に行き詰ってしまった。

 同氏は2008年10月に辞任し,Cadenceでは暫定的な経営組織「Interim Office of the Chief Executive」が発足した。その組織の責任者になったのがLip-Bu Tan氏である。そして,2009年1月には正式にPresident & CEOに就任した(Tech-On!関連記事1)。DA SHOW/CDN Live! Japan 2009の基調講演の内容や,Tech-On!とのインタビューから浮かんできたのは,主力分野(SoCのインプリメンテーション設計・検証)への集中と,経営指標の見える化(売り上げ計上方式の変更)など,前任者とは対照的な手堅い戦略である。20年以上,ベンチャー・キャピタリストとして歩んできた同氏の経歴と,米国経済状況がその背景にあると言える。

問:Cadenceの大手顧客である半導体産業の状況をどう見ているか

 2009年はチャレンジングな年だ。半導体業界も例外ではない。恐らく,2009年の市場規模は2008年に比べて20%近くも縮小する。ただし,すでに底打ちはしている。2009年第2四半期の売り上げは,第1四半期に比べて増えたし,在庫の補充も始まった。また,今回の不況は,2000~2001年のITバブル崩壊後の不況に比べて,在庫が少ないという面もある。時間はかかるが,半導体産業はゆっくりと回復している。