図◎実験装置(○で囲った部分)を船外実験プラットフォームへ移送・設置する様子。
図◎実験装置(○で囲った部分)を船外実験プラットフォームへ移送・設置する様子。
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 新日鉄化学(本社東京)は2009年7月21日,同社が開発したフィルム「シロキサン変性ポリイミドシートBSF-30」が,宇宙航空研究開発機構(JAXA)による宇宙材料曝露(ばくろ)実験試料に採用されたと発表した。同月16日に打ち上げられたスペースシャトル「エンデバー」が,同フィルムを国際宇宙ステーション(ISS)の「きぼう」日本実験棟へ運んだ(図)。

 同材料を使用するのは,JAXAがISSで実施する「きぼう船外実験プラットフォーム利用微小粒子捕獲実験及び材料曝露実験」(JEM/MPAC&SEED実験)。人工衛星などで使用する材料の開発・評価を目的とする実験だ。特に,宇宙ステーションなどが周回する高度400km域に存在する,酸素分子が分解した原子状酸素への耐性を,実際の宇宙空間で検証する。

 人工衛星の本体などを包む耐熱シートとしては,一般にポリイミド樹脂のフィルムを使用するが,このフィルムに原子状酸素が衝突すると,シートの表面が侵食される。それに対して同社が開発したBSF-30は,原子状酸素と衝突すると,フィルムの表面にシリカ(SiO2)の皮膜を形成するので,侵食を防げる。形成した皮膜が剥離(はくり)した場合には,新しい皮膜を形成する。このように原子状酸素への耐性に優れることから,今回,JEM/MPAC&SEED実験に採用されたという。

 今回の実験では,直径25mm×厚さ25μmのサンプルシートを「きぼう」の船外実験プラットフォームにおいて,約8カ月にわたって宇宙空間に曝露する。その後,2010年3月に打ち上げ予定のスペースシャトルがサンプルを回収し,日本へ輸送後,新日鉄化学が詳細に分析する予定だ。実験結果を基に同社は,材料の改良や本格的な事業化に向けた計画を進める。