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 青山学院大学 教授の中田時夫氏の研究室は,Ti箔を基板とするフレキシブルなCIGS系太陽電池で,セル変換効率18.8%を得たことを明らかにした。フレキシブルなCIGS系太陽電池としては最高クラスの効率である。2009年7月17日に横浜市で開かれた,新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「太陽光発電技術開発及び関連事業」の成果報告会で発表した。

 このフレキシブルなCIGS系太陽電池の変換効率は,面積0.5cm2のセルで,しかも電極のある部分を除外した開口部のみでの値が18.8%。電極部などを含むセル全体では17.9%である。産業技術総合研究所が2008年7月に発表したフレキシブルCIGS系太陽電池は,開口部のみのセル変換効率が17.7%だった(関連記事)。今回のセルの開放電圧は0.645V,短絡電流は37.4mA/cm2,FFは0.740である。セル表面には,反射防止膜をコーティングしているという。

 このセルのもう一つの特徴は,バッファ層にCdS(硫化カドミウム)を用いていないことである。ここでいうバッファ層とは,CIGS半導体層と透明電極の間に挟む100nm厚程度の薄い半導体層のこと。キャリアの移動を一部せき止めるような役割を持つが,この層を用いたほうが,高い変換効率が得られることが知られている。実際,変換効率が15%を超えるようなCIGS系太陽電池のほとんどで,バッファ層にCdSが用いられている。

 しかし,Cdは環境汚染の立場からは極力用いないことが求められており,CdSの代替となる材料が盛んに研究されている。「今回の効率は,CdフリーなCIGS系太陽電池としても世界最高」(青学 教授の中田氏)という。