自動車の横滑り防止装置(Electronic Stability Control:ESC)の普及拡大に向け,日本自動車連盟(JAF)が普及促進活動に乗り出す。世界各地の自動車業界団体とFIA Foundation for the Automobile and Societyが共同で実施している「Choose ESC!」キャンペーンを,日本ではJAFが展開していく。
具体的にはESC装備車の試乗会を開くほか,機関誌やWWWサイトを通じた啓蒙活動をする。JAFはこれまで自動車の安全装置全般に関する体験会の中でESC装備車に試乗する機会を設けていたが,今後はESCに特化した「ESC体験試乗会」も主催する。2009年は,同年9月23日の岡山県運転免許センターでの開催を皮切りに,全国3カ所で一般ユーザーを対象にしたESC体験試乗会を催す。ESCメーカーであるドイツRobert Bosch GmbH およびドイツContinental Automotive Systems社の各日本法人がこの試乗会に協力する。
Bosch社の調べによると,日本のESC装備率(新車登録ベース)は2008年で19%。米国の58%や欧州の55%に比べて低い。自動車事故対策機構の碇孝浩氏(企画部長)は「欧米では盛土構造でもガードレールのない道路が少なくないため,横滑りで自動車がレーンを外れると生死に関わる重大事故になりやすい。冬場の雪や氷も日本以上に厳しい地域が多い。こうした状況を受けて2011年にはESC装備が義務化されるため,日本より普及が進んでいるようだ」と説明する。
しかし「日本でもESCの普及が進めば自動車事故防止に大きな効果がある」(JAF専務理事の久米正一氏)という。日独4大学/研究所の教授ら5人の共同研究(PDF形式の発表資料)では,日本国内のESC装備率が100%の場合,0%の場合に比べて2009年は自動車事故による死亡者を344人,重傷者を1937人,軽傷者を1万1126人減らせると推定している。
JAFの記者会見には,ラリー・ドライバーの篠塚建次郎氏も登壇。「例えばABS(Anti-lock Brake System)なら,プロのドライバーであれば運転技術で同じような機能を実現できなくもないが,ESCは人間にできる範囲を超えた,優れた機能だ。そして,公道は人間の予測の範囲を超えたことが起きる場所。ドイツなど(公道を走る自動車の)平均速度が速い国から普及しはじめた事情はよくわかるが,国内でもESCが標準装備されるようになればいいと思う。ESCという言葉自体,日本ではまだまだ認知されていないと思うので,記者の皆さん,どうかたくさん記事にしてください」と呼びかけた。