シャープは,BS/CS/地上デジタル放送を無線伝送する屋外用ミリ波モジュールを開発したと発表した(発表資料)。DXアンテナが,同モジュールを用いた「デジタル放送伝送システム」を,2009年7月13日から販売する。地上デジタル放送を受信するために,改修工事を必要とする集合住宅などに向ける。

 今回開発したシステムは,マンションやビルの屋上などに設置したアンテナが受信した放送を,各住戸に無線伝送するもの。各住戸のベランダに受信機を設置するといった簡便な工事で,BS/CS/地上デジタル放送を受信できるようになるため,大規模な改修・配線工事が不要になる。使用した周波数帯は60GHz帯。特定小電力規格に準拠しており,機器の使用者が無線免許を取得する必要はない。シャープは2009年1月に,ミリ波を使った地上デジタル放送信号伝送システムの試作機を開発したと発表している(Tech-On!の関連記事)。

 シャープは2005年から,総務省からの委託研究「ミリ波無線装置の低コストの小型ワンチップモジュール化技術の研究開発」に取り組み,今回のシステムに用いた屋外用ミリ波モジュールを開発した。DXアンテナは,同社のアンテナ受信技術を用いて,シャープの開発した屋外用ミリ波モジュールをマンションなどに設置して実証実験を行い,地上デジタル放送などの共同受信システムの構築を進めてきた。

 シャープによれば,地上デジタル放送を受信するために,ケーブルの新設といった大規模改修が必要な集合住宅は,国内に約4万2000棟あるという。シャープとDXアンテナは,簡便な工事で済む今回開発した伝送システムの普及を通じて,地上デジタル放送の受信世帯拡大に貢献するとしている。