米doubleTwist Corp.は2009年7月9日,ビデオや音楽,写真のデータを携帯電話機や携帯型メディア・プレーヤーなどに転送できるソフトウエア「doubleTwist」の日本語版の提供を開始した。無償で利用でき,同社のWebサイトで配布する。
doubleTwistは,「iTunes」や「Windows Media Player」といったソフトウエアが管理するライブラリに含まれるデータや,動画共有サイト「YouTube」からダウンロードした動画,ユーザーがビデオ・カメラで撮影してパソコンに取り込んだ動画などを,各種の携帯機器に転送できることを特徴とする(図1,図2)。doubleTwistの日本語版は,NTTドコモの80機種超,KDDIの60機種超,ソフトバンクモバイルの20機種超にメディア・データを転送できるとする。このほか,iPod Touch,同 classic,同 nanoのiPod製品群,ソニー・コンピュータエンタテインメントの携帯型ゲーム機「プレイステーション・ポータブル(PSP)」などに対応する。doubleTwistは,転送先の機器に応じて解像度やファイル形式,符号化方式などを変換した上でメディア・データを転送する。ただし,デジタル著作権管理(DRM)技術によって保護されたメディア・データは転送できない。
機器に合わせた使い分けをなくしたい
doubleTwist社 Co-Founder and CTOのJon Lech Johansen氏は,DVDのコピー防止技術「CSS」を解除するソフトウエア「DeCSS」を開発し,“DVD Jon”という通称で知られる有名プログラマーである。デジタル・メディアの互換性向上を目指した取り組みを続けてきたJohansen氏を擁するdoubleTwist社は,「『この機器にメディア・データを転送する場合はこのソフトウエア』という使い分けをユーザーに強要するべきではない。どのWebブラウザーであってもすべてのWebサイトを利用できるのと同様に,あらゆる機器へのメディア転送が単一のソフトウエアでできることが望ましい」(同社 Co-Founder and CEOのMonique Farantzos氏,図3)と考えて開発したという。
doubleTwist社は,2009年2月にdoubleTwistのMac版,同年4月にWindows版を発表した。今回発表した日本語版は,英語版以外の最初のバージョンである。「日本は,世界で最も成熟したモバイル市場であり,携帯電話機が備える機能も最高峰だろう。しかし,その携帯電話機があまりメディア・プレーヤーとして利用されていない。パソコンから携帯電話機へのメディアの転送がユーザーにとって難しいからではないか」(Farantzos氏)とみて日本語版の提供を始めた。
doubleTwistを無償で提供する同社は,(1)doubleTwistの高機能版の有償での提供,(2)doubleTwistユーザーへの有料コンテンツの販売仲介,という二つの方法で収益を上げる計画である。(2)は,有料コンテンツの販売者と協力し,それらをdoubleTwistの画面から購入できるようにすることで,販売者から手数料を得るモデルである。