図1 Google社, Developer, ProgramsのPamela Fox氏
図1 Google社, Developer, ProgramsのPamela Fox氏
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 世界中で地図データを使ったサービスへの取り組みが盛り上がる中,大きな存在感を示すのが米Google Inc.である。一般ユーザー向けの「Google Maps」や,開発者向けの「Google Maps API」などを提供する。Google社で地図サービスの普及を推進する同社, Developer, ProgramsのPamela Fox氏に,最近の取り組みを聞いた(図1)。

Google Mapsの強みはどこにあると考えているのか


 イラスト中心の単なる地図データとしてだけではなく,実写画像を加えたデータとして提供できる点が,他の地図サービスと大きく異なると考えている。道路沿いの実写画像を見せる「Street View」や「Google Earth」,多くのユーザーが投稿した写真データも見せられる。

今後,Google Mapsで注力する分野はどこか


 携帯電話機やスマートフォンなどモバイル端末向けサービスをさらに充実させる。このために,モバイル端末で動作することを重視した「Google Maps API Version 3(Ver. 3)」を2009年5月にリリースした。これまでのバージョンは主にパソコン向けだった。Ver. 3では,米Apple Inc.のスマートフォン「iPhone」や,モバイル端末向けOS「Android」を搭載した機種でGoogle Mapsが快適に使えるように最適化してある。

Ver.3になって,何ができるようになるのか


 外部の開発者が,Google Mapsを使ったモバイル端末向け地図サービスを開発しやすくなる。Ver. 3がリリースされる前は,Apple社によるObjective-Cで記述されたソフトウエア,Javaで記述されたソフトウエア,C++で記述されたソフトウエアなどが混在しており,開発者にとって更新などの負担が大きかった。Ver.3ではすべてJavaになる。

 加えて開発の自由度が大きく広がる。Ver. 3によって,地図サービスの開発に必要となるAPIをほぼ揃えられた。これにより,開発者の想像力を駆使した新しいサービスを作り出すことが可能になるはずだ。

 その上,今後,ブラウザーが次世代のHTML仕様「HTML 5」になり,これと併せて使えばさらに快適な地図サービスが開発できるだろう。HTML 5では,画像処理などに向けた「Canvas」タグなどが標準装備される。これを使えば,CSS(Cascading Style Sheets)などにより端末側で地図のスタイルを変更することが簡単になる。

モバイル端末でGoogle Mapsを使うには,無線通信が基本になる。その際,現状の通信速度ではまだまだ遅延時間が大きいように思える。これについては,どう対処していくつもりなのか


 我々は遅延時間(レイテンシー)を二つの側面から捉えている。一つは実際の遅延時間。地図表示に必要なデータをダウンロードする時間や,そのデータを処理する時間のことである。これは通信インフラや端末の処理速度に依存する。我々は通信インフラが次世代に移行する際に迅速に対応していく方針である。

 もう一つは,ユーザーが遅延だと認識する時間である。どれだけ待たされているとユーザーが感じているのか,ということだ。これにはインタラクティビティ(対話性)が大きく関連している。地図画面の拡大・縮小をどれだけスムーズに感じられるように実行するのか,といったことが重要になる。この遅延時間を短縮化するため,ユーザーの認知にかかる時間についてさまざまな統計を取って定量化している。この統計を基に,遅延時間が小さいと感じてもらえるインタラクティビティの開発に注力している。

今後,端末側に期待することはなにか


 遅延時間の問題とも関連するが,もっと“リッチ”で高速な演算機能を持つ端末になって欲しい。その方が,ユーザーが使いやすい地図サービスを開発できる。現在,モバイル端末で地図を見る際,タイル状に分割された画像データをダウンロードしている。将来,端末の処理速度が速くなれば,画像データより容量の小さなベクトル・データをダウンロードし,端末側で地図の描画処理を行えるだろう。こうなればダウンロードに必要な時間が短くなり,高速で快適なサービスを提供できる。

地図サービスといえば,カーナビが代表的だ。Google社も自動車メーカーなどとカーナビ向け地図サービスに取り組んでいるが,進捗はどうなっているのか


 いろいろな取り組みはある。ただ,他企業とのライセンスの問題もあり,現段階ではコメントできない。