インターネット接続大手のNECビッグローブは,2012年度に売上高を2008年度比43.5%増の1300億円にする方針を明らかにした。接続環境に応じて最適な無線ネット接続を選択してくれる新サービスや,ライフログ・サービスなど個人向けサービスの拡充や,M&A(合併・買収)などを核に売り上げを伸ばす考え。7月8日に開いた事業説明会で同社の飯塚久夫社長が語った。

NECビッグローブの飯塚久夫社長
クラウドコンピューティングを活用した個人向けサービスなどを核に2012年度の売上高を1300億円に伸ばすと語った
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 NECビッグローブは2010年度に1000億円の売上高を目指し,ネット接続事業に代わる収益の柱の確立を急いでいる。2008年9月には,ネット通販ベンチャーの桃源郷に出資,連結子会社化するなどM&Aにも積極的に取り組む。今回明らかにした計画は,2010年度に計画する売上高から2年間で300億円積み増す内容。飯塚社長は「個人向けネット・サービス,M&A,ベンチャー企業への投資事業を含めた目標値。それぞれの分野で同じ規模の売り上げ増を実現したい」と意気込みを語った。

最適な無線ネット接続を選択

 説明会では,この目標を実現するため,クラウドコンピューティングをキーワードに2009~2010年にかけて,複数の個人向け新サービスを投入することを明らかにした。

 2009年8月に家庭内や屋外のネット接続サービスの中から最適なものを選んで無線通信を使って接続するサービス「BIGLOBEマルチコネクト」を始める。パソコン向けの専用ソフトウエアを提供して実現する。

 NECビッグローブのネット接続会員があらかじめこのソフトウエアでID番号を登録しておくと,自宅では家庭内ネットワークの無線LANを介したネット接続,店舗では公衆無線LAN,屋外ではモバイルWiMaxサービスといったように最適な接続回線を自動で選んでネット接続する仕組み。いずれはパソコンだけでなく,携帯電話機やデジタル・カメラなどの組み込み機器にも対象を広げる計画だ。

 2009年11月には,ポータル・サイトの検索サービスを拡充する。リコメンド(推薦)エンジンを導入し,ユーザー属性や行動履歴などに合わせ最適な検索結果を表示する仕組みを取り入れる。

パソコンと携帯電話機の操作感を同じに
「BIGLOBEゲート」のパソコン向けソフトの画面例。Webサイトの閲覧履歴や操作履歴などを同期させる
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 このほか,2010年3月をめどにパソコンと携帯電話機の間で,Webサイトの閲覧履歴や操作履歴などを同期するサービス「BIGLOBEゲート(仮称)」を始める。パソコンと携帯電話機向けに専用ソフトウエアを配布。異なる機器間でほぼ同じユーザー・インタフェースを採用し,機器によらず共通の操作感でWebサイトの閲覧や電子メールなどのネット・サービスを利用できるようにする。自宅のパソコンで検索した内容を外出先に持ち出して利用するような作業がしやすくなる。

 まずは米Google社の組み込み機器向けソフトウエア群「Android」を搭載した携帯電話機や,米Apple社の携帯電話機「iPhone」向けに専用ソフトを提供する。パソコン向けには専用ソフトのほかに,Webブラウザー上でもサービスを利用できるよう検討する計画だ。

ライフログ用の専用機器で実験サービスを提供へ

ライフログを手軽に投稿
NECビッグローブが試作した「ライフログ・アップローダー」と呼ぶ携帯機器(中央の黒い箱)。無線通信を使って写真や行動履歴をネット上に投稿できる
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 説明会では,個人が日常生活での行動を無線通信を使いネット上に簡単に投稿できる「ライフログ・アップローダー」と呼ぶ携帯機器の試作版も紹介した。小型メモリ・カードやUSBメモリなどをスロットに挿入し,ボタンを押すと,デジカメで撮影した写真や,GPS端末で取得した行動履歴などのデータを無線でネット上に投稿する仕組みを想定している。投稿されたファイルに書き込まれた位置や時刻の情報を基に,自動で日記や旅行記などに整理するネット・サービスのデモを見せた。

 2010年3月にも,この機器を使った実験サービスを開始する計画。ビッグローブの会員向けに,開発した機器を有償で提供することで収益を上げるビジネスモデルなどを検討しているようだ。