NECは2009年7月1日,自宅のパソコンを遠隔地から利用可能にする個人向けシンクライアント技術「Lui」の新製品を発表した。最大の変更点は,これまでLui専用クライアント機「PCリモーター」に搭載されていたソフトウエアを切り出して,同社のネットブック「LaVie Light」に移植したこと。同ソフトをインストールしたLaVie Lightを「LaVie Light Lui」という製品名で販売する。また,自宅のパソコンをLuiのサーバーとして利用するための拡張ボード「PCリモーターサーバボード」も同時に発表した。

 従来のLuiのPCリモーターは,単体での利用はできない。NECによると,「回線がつながらない場所では,ローカルで作業できる機能が欲しい」という要望が多かったと言う。今回,クライアント機にLaVie Lightを採用したことにより,PCリモーター機能のほかに通常のネットブックとして単体でも利用できる。PCリモーター機能とローカルのアプリケーションを同時に実行することも可能だ。加えて,LaVie Lightで使える様々なUSBタイプの通信モジュールをLuiで利用できるというメリットもある。

 また,NEC ユビキタス事業開発本部長 栗山浩一氏は,「新しいPCリモーター機能は非力なネットブックに対する不満を解消する」と言う。ネットブックでは実行できないWindows Vista対応アプリケーションをPCリモーターによってネットブック上で実行したり,ネットブックではかくかくしてしまう高画質動画でもPCリモーターを使えばなめらかに再生できたりするからだ。

 Luiは2009年1月発表のモデルから,独自機能の「リモートスクリーン」(本体パソコンの画面の画像をクライアントに転送する方式)のほかに,Windows XPやVistaの一部エディションで利用できる「リモートデスクトップ」(本体パソコンから画面を描画するためのコマンドをクライアントに転送する方式)にも対応した。今回のLaVie Light Luiでも両方の機能を利用可能である。通信回線が細い場合はデータ量の少ないリモートデスクトップを使い,高画質動画を見たい場合はリモートスクリーンを選ぶ,といった使い分けもできる。

 AtomベースのLaVie Lightで動作するPCリモーターのクライアント・ソフトは,x86互換プロセサを搭載するほかのパソコンでも実行可能とみられる。しかし,ソフトだけの単体販売はない。その理由について栗山氏は,「LaVie Lightの付加価値として,ネットブックの新たな魅力を強調したい」と語った。

 LaVie Light Lui(BL330/TA)の仕様は,既存のLaVie Light(BL350/TAやBL300/TA)とほぼ同じである。BL350/TAと同様に,大容量バッテリーである「バッテリパックL」を標準で搭載している。本体の質量は約1.32kgで,バッテリー駆動時間は約8.5時間。本体カラーは,既存のLaVie Lightには用意されていない「アーバンメタルシルバー」を採用している。市場の想定価格は約6万8000円で,7月9日に出荷開始する。

 一方のPCリモーターサーバボードは,これまでPCリモーターと拡張ボードのセットで販売されていた「PCリモーターサーバボードセット」のうち,拡張ボードだけを単体販売するもの。パソコンのPCIスロットに増設するボードで,標準サイズとロープロファイル用の2種類の製品がある。想定価格は約4万円。

 なお,すでにPCリモーターを使っているユーザーには,「無償アップグレードパック3」を7月30日から提供する。このアップグレード・ソフトをPCリモーターに適用すると,UQコミュニケーションズが提供する無線データ通信サービス「UQ WiMAX」のUSB端末「UDO1SS」を利用した通信が可能になる。