産業技術総合研究所 太陽光発電研究センターは,太陽電池技術についての「第5回成果報告会」(2009年6月22日~23日)で,80~100μm厚と非常に薄いSiウエハーを用いた単結晶Si型太陽電池でエネルギー変換効率15.9~17.3%を得たと発表した。

 今回のセルは,電極をスクリーン印刷と「両面同時焼成プロセス」というプロセスで作製したという。2cm角,100μm厚のセルの発電能力は,効率17.3%,開放電圧0.617V,短絡電流35.5mA/cm2,FFが0.789。2cm角,80μm厚のセルは,効率15.9%,開放電圧0.614V,短絡電流32.8mA/cm2,FFが0.792だった。

 従来,Siウエハーをここまで薄くすると変換効率も大きく下がるという見方があったが,表面の凹凸加工による光閉じ込め技術やプロセスの改善などで変換効率を高い値に保てるようになったとする。特に100μm厚でのデータは,産総研が比較に用いた180μm厚の太陽電池でのデータと差がほとんどなくなったという。
 
 今回,産総研は多結晶Si型のセルでも,変換効率が100μm厚で約15%という予備的な値を得ていることも明らかにした。「多結晶Siのウエハーは粒界などがある関係で,単結晶Siよりも薄型化が難しい」(同センター 結晶シリコンチーム チームリーダーの坂田功氏)。

 数十μmのSiウエハーは,一般には割れやすく,ハンドリングが難しいとされる。これに対して産総研は「ドイツでは30μm厚のウエハーを扱える装置も開発されており,ハンドリングに大きなハードルはない」(同センター)と見ているとした。