高速化や高密度化などによって,ボードやパッケージの実装設計が難しくなってきた。このため,かつてはそれぞれ個別に設計していたチップとパッケージ,ボードを一貫して設計・解析する必要性が高まっている。この一貫解析・設計をテーマにした研究会が,6月4日に実装の総合イベント「INNOVATION FOR THE NEXT DREAM」と同じ東京ビッグサイトで行われた。
この研究会は,エレクトロニクス実装学会のJisso-CAD/CAE研究会(旧:システム実装CAE研究会)が催したもので,テーマは「チップ・パッケージ・ボード設計のためのCAE-熱およびパワー・インテグリティ問題と対応策-」だった。実装に携わっている5人の講師が登壇し,それぞれの立場から最近の実装設計で留意すべき点を訴えた。さまざまな視点からの意見が聞け,半日の研究会ながら充実した内容だった。以下で各講演のポイントを紹介する。
熱解析の業界データベース構築を
最初に登壇したのは,サームテック・インターナショナルの中山恒氏である。大型コンピュータの冷却設計に長い間携わっていたという同氏は,実機ができてから熱対策をするのではなく,初期設計時から熱に関する検討を行うことが重要だとした。初期設計時には実機がないため,シミュレーションに頼ることになるが,「市場には基本的に連続体モデルをベースにした数値解析しかない」(同氏)。
このため,実際に使われている各種基板のような複合材では,シミュレーションに必要な熱伝導率や比熱などに対する等価物性値を準備しなければならない。これが設計者の大きな負担になることから,等価物性値のデータベースを業界として準備することの重要性を訴えた。現在,同氏らのグループはデータベースの構築に向けて活動しており,その活動への参加を聴講者に呼びかけた。