図1 クアルコムジャパン 代表取締役会長兼社長の山田純氏
図1 クアルコムジャパン 代表取締役会長兼社長の山田純氏
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図2 携帯電話機からパソコンや民生機器への広がりに期待
図2 携帯電話機からパソコンや民生機器への広がりに期待
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 米Qualcomm Inc.の日本法人であるクアルコムジャパンは,2009年5月29日に記者説明会を開催し,同社 代表取締役会長兼社長の山田純氏が,Qualcomm社の現在の取り組みや,今後の方向性などについて説明した(図1)。例えば「ネットブック」などと呼ばれる小型パソコンと,「スマートフォン」などと呼ばれる高機能型の携帯電話機との競合については,「まだ争いが始まったばかりで,今後どのように展開するかは分からない」としながらも,「クラウド・コンピューティングの普及は,よりシンプルな端末の重要性を高めることになる。それはWindowsパソコンにとって脅威だろう。クラウドは業界地図を変える可能性を秘めている」と語った。

 3Gの移動体通信用チップセットを提供するQualcomm社は,携帯電話機に続く応用分野として,パソコンや民生機器などを期待している(図2)。例えばパソコン分野では,無線LANやBluetoothなどの通信機能を兼ね備えた3G通信モジュール「Gobi」の提供を始めている。山田氏は,「特に期待しているのが民生機器の分野だ。WAN(wide area network)機能を備えることで機器の可能性が広がる」とした。その好例として挙げたのが,米 Amazon.com社の電子ブック端末「Kindle」である。「Kindleは3G通信機能があってこそ実現できたものだが,ユーザーは3G端末だと思って使っているわけではないだろう。こうした使い方がもっと広がってほしい」(山田氏)。

「BREW」は低価格市場へ

 Qualcomm社は,同社のチップセット上で,「Android」や「Windows Mobile」,「Symbian」など,各種のソフトウエア・プラットフォームが動作するように取り組んでいる。「ソフトウエア・プラットフォームはまだ百花繚乱の状態にある。どれかに肩入れするのではなく,どれでも使えるように,顧客からの要望に幅広く応えていく」(山田氏)。

 同社が提供するソフトウエア・プラットフォームである「BREW」については,記者から「オープンなプラットフォームに押されているように見えるが,いつまでサポートを続けるのか」という質問も出た。これに対し山田氏は,「高機能なオープン・プラットフォームとの競合を考えると,そうした質問が出るのも理解できる。しかし,BREWに対するニーズはまだまだ大きく,発展する余地が十分にある」とした。具体的には,発展途上国などにおいては低価格な携帯電話機の需要があり,BREWを使えば安く,速く端末を開発できると主張した。「これまではVerizon Wireless社やKDDIといったハイエンドの市場でBREWが使われてきたが,今後はミドルからローエンドの市場での利用が増えるだろう」(同氏)。