出典:日経エレクトロニクス,2009年01月12日,pp.14-15(記事は執筆時の情報に基づいており,現在では異なる場合があります)

 ハリウッドの重い扉をこじ開けたのは,米Apple Inc.や米Microsoft Corp.ではなく,日本のDVDレンタル/販売大手「TSUTAYA」だった─。

 国内で映像配信サービスを手掛けるツタヤオンラインは,アクトビラに対応するデジタルAV機器に向け,視聴期間に制限を設けない「セルスルー配信」に対応したHD動画ダウンロード・サービスを2008年12月19日に始めた(図1)。HDDに記録した映像を,Blu-ray Discなどの記録媒体へ最大2回書き出せる注1)。HDD内に多数の映画をコレクションしたり,外部媒体にコピーして持ち出したりといったユーザー体験を,HD映像で実現してみせた。

図1 Blu-ray DiscやiVDRに最大2回書き出せる
図1 Blu-ray DiscやiVDRに最大2回書き出せる
ツタヤオンラインが開始したEST(electronic sell-through)サービスでは,同社が保有するサーバーを通じて,家庭内のテレビまたはレコーダーが内蔵するHDDにHDTVコンテンツをダウンロードできる(a)。DRMはMarlin DRM方式。コンテンツは期間/回数の制限なく視聴できる。さらに,コンテンツを外部の媒体に最大2回書き出せる(b)。HDTV映像のまま書き出せる媒体は,BD-R/RE,DVD-R(2層),iVDR-Sの3種類。DRMは,BD-R/REおよびDVD-RではAACS方式に,iVDR-SはSAFIA方式に変換する。このほか,DLNA対応の端末に,DTCP-IPで保護した形で映像を配信することもできる。SDTV画質にダウンコンバートした形で,SDメモリーカード,メモリースティックPRO,EMPR(embedded memory with playback and recording function)にも書き出せるようにする。

†アクトビラ=パナソニック,ソニー,東芝,シャープ,日立製作所,ソネットエンタテインメントが共同で設立した,デジタルAV機器向けコンテンツ配信サービス。インターネットのアクセス回線経由で映像コンテンツなどを配信する。

注1) 今回配信するのは,画素数1080i,符号化方式MPEG-4 AVC/H.264,符号化速度が平均10Mビット/秒,最大20Mビット/秒のVBR(variable bit rate)方式で記録した映像である。書き出しの回数はコンテンツごとに異なる。新作の映画については,Blu-ray Discパッケージ媒体の発売に合わせて配信を始める。価格は,映画1作品当たり平均で3675円と,一般のBlu-ray Discパッケージ媒体よりもわずかに割安である。TVシリーズは1作品当たり893円である。なお,現在,このサービスに対応するのはパナソニックの Blu-ray Discレコーダーと日立製作所の薄型テレビの一部のみ。

 機器メーカーにとって今回のサービスは,Blu-ray DiscレコーダーやiVDR搭載機の付加価値を高める格好の材料となる。2009年春から夏にかけ,複数の企業が同サービス対応のBlu-ray Discレコーダーを出荷するもようだ。