図1 2008年度業績の概要
図1 2008年度業績の概要
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図2 ソフトバンク 代表取締役社長の孫正義氏
図2 ソフトバンク 代表取締役社長の孫正義氏
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図3 売上高の推移。インターネット・カルチャー事業以外はいずれも微減となった
図3 売上高の推移。インターネット・カルチャー事業以外はいずれも微減となった
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図4 営業利益の推移。移動体通信事業は微減だったものの,ブロードバンド・インフラ事業,固定通信事業,インターネット・カルチャー事業のいずれも増益となった
図4 営業利益の推移。移動体通信事業は微減だったものの,ブロードバンド・インフラ事業,固定通信事業,インターネット・カルチャー事業のいずれも増益となった
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図5 移動体通信事業の加入者1人当たりの月間支払額の推移。端末購入代金の割賦請求分(黄緑色の部分)を加えると横ばいだが,基本料と音声を足した部分の収入(音声ARPU,紫色の部分)が大きく減少し,ARPUでは前年度比12.4%減となった。データ通信の収入(データARPU,オレンジ色の部分)は増加している
図5 移動体通信事業の加入者1人当たりの月間支払額の推移。端末購入代金の割賦請求分(黄緑色の部分)を加えると横ばいだが,基本料と音声を足した部分の収入(音声ARPU,紫色の部分)が大きく減少し,ARPUでは前年度比12.4%減となった。データ通信の収入(データARPU,オレンジ色の部分)は増加している
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図6 設備投資額の推移。2006年度をピークに,減少傾向にある
図6 設備投資額の推移。2006年度をピークに,減少傾向にある
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図7 純有利子負債の推移
図7 純有利子負債の推移
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図8 純有利子負債の削減目標
図8 純有利子負債の削減目標
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 ソフトバンクは2009年4月30日に,2009年3月期(2008年4月~2009年3月)の連結決算を発表した(決算資料の掲載ページ)。売上高は前年度比3.7%減の2兆6730億円,営業利益は前年度比10.7%増の3591億円で,減収増益となった(図1)。今回の営業利益は同社として過去最高である。代表取締役社長の孫正義氏は,「ボーダフォン(日本法人)の買収で,『ソフトバンクは大き過ぎる借金を背負った』と言われたものだが,それを完済できるメドがはっきりと立った決算だ」と述べ,6年後の2014年度末に純有利子負債をゼロにすると宣言した(図2)。

 連結売上高の約6割を占める移動体通信事業は,売上高が4.2%減の1兆5628億円,営業利益が1.8%減の1713億円だった(図3図4)。減収の最大の要因は,端末の販売台数が減少したことである。「以前の端末販売は,売れば売るほど利益が減るというものだった。我々が業界に先行して割賦販売を導入したのは,ユーザーが端末を長期間にわたって使ってくれるようにするため。この端末販売の減少は,経営的に意図した通りだ」(孫氏)と説明した。

 2008年度のARPU(1契約当たりの月間平均収入)は4070円で,前年度比で12.4%減少した。データARPUが1740円(前年度比16.7%増)に増えたものの,特別割引「月月割」の利用者数の増加などで音声ARPUが2320円(同26.3%減)に落ち込んだためである(図5)。しかし,累計契約数が11.0%増加したことなどにより,孫氏が「長期的に考えれば最も大切」と主張する通信料収入は141億円増加した。

ブロードバンドや固定通信も増益

 その他の主な事業分野は以下の通り。ソフトバンクBBなどによるブロードバンド・インフラ事業は売上高が2351億円(前年度比8.9%減)で営業利益が472億円(同19.0%増),ソフトバンクテレコムなどによる固定通信事業は売上高が3636億円(同1.9%減)で営業利益が189億円(同467.9%増),ヤフーなどによるインターネット・カルチャー事業は売上高が2542億円(同2.7%増)で営業利益が1250億円(同8.6%増)だった。「『ブロードバンド・インフラ事業や固定通信事業は失敗だった』というイメージがあるかもしれないが,黒字基調が定着している。この二つを足した業績に至っては,この6年間,着実に右肩上がりの業績を続けており,2008年度はNTT東西(の予測値)やKDDI(の固定通信事業)の営業利益を上回っている」(孫氏)と,堅調であることをアピールした。

 2009年度は増収増益を見込む。売上高の予測値は非公開だが,営業利益は約17%増の4200億円になるとした。増収増益を見込む要因として,2年間限定の月月割が終わる加入者が出てくることで音声ARPUの改善が見込めること,NTTドコモが2009年4月28日に打ち出したデータ通信料定額プランの最低料金引き下げに追従して定額プランへの移行を促すこと,設備投資額が減少することなどを挙げた。

 2008年度の設備投資額は,前年度比11.8%減の2590億円だった。2009年度は2200億円とさらに減少する見込みである(図6)。「移動体通信事業の設備投資を前倒しで行ったことにより,設備投資額のピークは過ぎた」(孫氏)という。LTE(long term evolution)への移行に伴う設備投資は「2~3年以内」(同)に始める計画である。「設備投資額のうち,ハイテクにかかわる部分は思いのほか少ない。鉄塔を建てる場所の確保や工事などに伴う,ハイテクとは無縁の部分への投資が大半だ。既に我々は5万8000の基地局を有しており,それを新しい技術に対応させるための投資額はそれほど大きくならない」(同)との見通しを示し,LTEへの移行に伴う投資額については「1000億円を超える金額になるが,数年間に分散して投資していく」(同)とした。

 ボーダフォンの買収に伴う資金調達などで負った負債のうち,純有利子負債は2兆368億円(前年度比5.6%減)となった。そのうち,割賦販売の立て替え分が2190億円あり,実質的には1兆8178億円まで減少したとする(図7)。2009年度からの3年間におけるフリーキャッシュフローの合計を1兆円前後にし,そのほとんどを純有利子負債の返済に充てていく。これにより,3年後の2011年度に純有利子負債を2008年度比で半減させ,2014年度にゼロにすると宣言した(図8)。