シャープ 代表取締役 副社長 執行役員の濱野稔重氏
シャープ 代表取締役 副社長 執行役員の濱野稔重氏
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 シャープは2009年4月27日,2008年度(2008年4月~2009年3月)の連結決算を発表した。売上高は前年比16.7%減の2兆8472億円,営業利益は前年の1836億円の黒字から554億円の赤字に転落した。「市場価格の下落や円高の影響,液晶テレビや液晶パネルの流通在庫の圧縮に伴う追加対策の実施により収益が悪化した」(シャープ 代表取締役 副社長 執行役員の濱野稔重氏)という。

 同社は特別損失として,投資有価証券の評価損を498億円,会計基準改定に伴うたな卸資産の評価損を76億円,液晶工場の再編などの事業構造改革費用を584億円,米国における液晶パネルのカルテルによる独占禁止法関連の損失を120億円,計上した。この結果,2008年度の純損益は前年の1019億円の黒字から1258億円の赤字となった。

液晶テレビは1000万台突破もAV・通信機器は赤字に

 部門別に見ると,エレクトロニクス部門では液晶テレビや携帯電話機などの「AV・通信機器」は,売上高が前年比18.6%減の1兆3222億円,営業損益は535億8500万円の赤字となった。「AV・通信機器の赤字の大部分は液晶テレビ」(シャープの濱野氏)という。液晶テレビは,販売数が前年比21.3%増で1000万台を達成したが,大幅な価格下落と為替の影響もあり,売上高は同10.4%減の7293億円となった。携帯電話機とスマートフォンは,国内市場の低迷で販売数が前年比34.6%減の992万台,売上高は同32.8%減の4373億円となった。なお,販売における国内外の割合は,「国内が830万台強,海外が160万台程度」(シャープの濱野氏)という。

 白物家電を手掛ける「健康・環境機器」は,空気清浄機やサイクロン掃除機が好調に推移したが,エアコンや電子レンジが減少したため,売上高は前年比9.8%減の2252億円となった。ただし,営業利益は同94.4%増の37億円である。「情報機器」については,複写機やファクシミリの販売が減少し,売上高が前年同期比14.4%減の3514億円,営業利益は同54.1減の161億円となった。

 電子部品関連では,液晶パネルの売上高は前年比16.0%減の5738億円,営業利益は同95.4%減の40億円。価格の大幅な下落により,テレビ用の大型液晶パネルや携帯電話機向けの中小型液晶パネルの販売が減少したという。太陽電池は,生産量が前年比16.1%増の421MW分,売上高は同4.1%増の1571億円となった。「国内は好調に推移したが,欧州地域が下期以降,急激に悪化した」(シャープの濱野氏)ため,営業損益は,161億円の赤字となった。その他の電子デバイスでは,携帯電話市場の縮小の影響により,CCDやCMOSカメラ・モジュールなどの電子部品の販売が減少し,売上高は同27.1%減の2173億円,営業損益は119億円の赤字となった。

今期は売上高3.4%減の見通し

 2009年度の業績見通しは,売上高が前年比3.4%減の2兆7500億円。営業利益は500億円,純利益は30億の黒字を見込む。具体的には,「2009年上期(2009年4月~9月)が前年同期比20%減の1兆2500億円,営業利益はゼロにとどまるが,2009年下期(2009年10月~2010年3月)は前年同期比16.7%増の1兆5000億円,営業利益は500億円に回復すると計画している」(シャープの濱野氏)という。

 主要製品の販売予想としては,液晶テレビは,「足元の市況を踏まえて,販売数は前年(2009年度)並みの1000万台と保守的にみているが,(現在建設中の)堺工場が稼働する2009年下期には上期に比べて4倍の販売増を見込む」(シャープの濱野氏)という。携帯電話機は,前年比24%増の1230万台を見込む。「国内市場は2009年度並みの830万台程度だが,海外向けに400万台を計画している」(シャープの濱野氏)。このほか太陽電池は,生産量が前年比82.9%増の770MW分,売上高は同20.9%増の1900億円を計画する。

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掲載当初,記事タイトルで「営業損失は1258億円の赤字」としていましたが,「純損失は1258億円」の誤りです。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。