映像および音声の多チャンネル放送実験の概要
映像および音声の多チャンネル放送実験の概要
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 メディアフロージャパン企画は,沖縄県那覇市および豊見城市のユビキタス特区で,「MediaFLO」方式を使った映像および音声の多チャンネル放送の実証実験を開始した(発表資料)。MediaFLOは,米Qualcomm Inc.が推進する携帯端末向けのマルチメディア配信サービス。実験期間は,2009年4月16日~2009年秋を予定する。

 メディアフロージャパン企画が設置した実験試験局から,実験用の20の映像チャンネル,および三つの音声チャンネルを同時に送信し,さまざまな受信環境下において,この放送を実験用端末で受信する。最大30フレーム/秒で映像を伝送する。MediaFLOの最大の特徴である周波数利用効率の高さを実証するほか,送信側のパラメータや屋内外での電波受信状況に応じた,画質および音声品質の性能評価などを行う。

 使用する実験試験局は三つ。豊見城市に設置する中心局と高速道路局,那覇市に設置するギャップフィラー局である。空中線電力はそれぞれ,170W,10W,1W。中心周波数は,いずれも213.143MHz。実験用端末は,Qualcomm社が提供するMediaFLO受信専用端末である。実験に協力するチャンネルは,映像が「AXN」や「FOX」,「スペースシャワーTV」,「ディスカバリーチャンネル」,「ディズニー・チャンネル」など。音声チャンネルは,「FM OKINAWA」と「Brandnew J / J-WAVE」,「ラジオNIKKEI」である。

 2009年秋には,コンテンツ制作会社や端末開発メーカーと協力して,リアルタイムのストリーミング実験,および放送波のダウンロード・サービスである「クリップキャスティング」や「IPデータキャスティング」の実証実験を行う。クリップキャスティングは,あらかじめ選んだ番組を自動的に携帯端末にダウンロードし,いつでも視聴できるサービス。IPデータキャスティングは,あらかじめ選んだコンテンツの最新情報を,携帯電話機の待ち受け画面などに自動的に取り入れるサービスである。また,地方自治体などと連携した地域密着型のコンテンツ配信の実証実験も行うとする。

MediaFLOの走行中の自動車への伝送実験も実施

 加えて,メディアフロージャパン企画は,沖縄県那覇市および豊見城市のユビキタス特区において,トヨタ自動車の協力を得て,走行中の自動車に向けたMediaFLOサービスの伝送実験を実施したと発表した(発表資料)。実験時期は2009年3月。

 今回実験に用いたのは,複数の送信局から同一の周波数で同一のコンテンツを送信する「SFN(Single Frequency Network)」。豊見城市に設置した同一周波数を用いる中心局と高速道路局から,同一のコンテンツを送信し,高速道路や一般道路を走行しながら,実験用受信端末で受信した。実験に使用したのは,MPEG-4 H.264/AVC方式の30フレーム/秒の映像コンテンツである。

 さまざまなフェージング環境下における受信データを測定し,映像や音声の品質を確認した結果,低速走行時と高速走行時の両方において,滑らかで高品質な映像や音声を良好に受信できることを確認したとする。

 メディアフロージャパン企画は,今回の走行実験の結果を,SFNを前提とした携帯端末向けマルチメディア放送サービスのエリア設計などに役立てるとしている。

走行中の自動車に向けたMediaFLO伝送実験の概要
走行中の自動車に向けたMediaFLO伝送実験の概要
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