左はKindle 2,右はKindle。ディスプレイのサイズや縦横の寸法はほぼ同じ。操作ボタンなどのインタフェースには変更がある。(写真:中村 宏)
左はKindle 2,右はKindle。ディスプレイのサイズや縦横の寸法はほぼ同じ。操作ボタンなどのインタフェースには変更がある。(写真:中村 宏)
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本体の厚さは従来の約半分に薄型化された。左のKindle 2の厚さは約9mm。(写真:中村 宏)
本体の厚さは従来の約半分に薄型化された。左のKindle 2の厚さは約9mm。(写真:中村 宏)
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 「今,あのKindle 2が手元にあるんです。日経エレクトロニクスで分解してみませんか?」。そんなおいしい話が,筆者の元にいきなり転がりこんできた。Kindle 2は,米国のインターネット大手販売店Amazon.com社が2009年2月発表した,電子ブック端末「Kindle」の最新機種。残念ながら日本では販売されていない。それを入手した弊社某編集部のS記者が,何でもバラバラにしてしまう分解班にブツを提供してくれるというのだ。しかも,ご飯の奢りなどの代償なしに(らしい)。即座に「やります!」と返事したのは,言うまでもない。
 
 電子ブック端末は将来,有望なデバイスであると注目される一方,まったく新しいビジネスであるため,成功のハードルは高いとされる。実際,国内ではソニーやパナソニックも2007~2008年に同事業から撤退するなど,多くの企業がこのビジネスに挑戦して夢破れている。そんな中,初代Kindleは,米国で2007年11月に発売されるや,一時在庫切れになるほどの売れ行きを見せた。累計の販売台数などは公表されていないが,業界では「一番の成功例」と言われている。

 Kindleシリーズが人気を得ている理由は,他社が展開する電子書籍サービスと比較して蔵書が圧倒的に多いことや,端末の使い勝手が優れている点にある。現在,Kindle向けの「Kindle Store」の蔵書は約23万冊。端末は3Gの通信機能を内蔵しており,無線で書籍を購入して端末にダウンロードできる。しかも,いったん端末を購入すれば,通信費用を毎月支払わなくてもいい。

厚さは従来の半分に


 Kindle 2の初代機に対する主な改良点は,1.デザインの刷新,2.本体の薄型化,3.メモリ容量の増強,4.バッテリー駆動時間の長時間化,5.テキストの音声読み上げ機能の追加,などである。デザインについては,操作ボタンの種類やページめくりボタンの位置などが変更された。本体の厚さは 0.36インチ(約9.1mm)と,初代機の約半分にまで薄型化された。なお,重さは10.2オンス(約289g)と,従来からほとんど変わっていない。

 搭載メモリは従来の256Mバイトから2Gバイトに増強された。これによって,メモリに保存できる書籍データは1500冊と従来の7.5倍になった。バッテリー駆動時間は従来比25%延長した。ディスプレイは米E Ink社の電子ペーパーで,画面寸法が6型,画素数が600×800でモノクロ表示という点は変わっていない。しかし,階調数は従来の4から16に向上したほか,ページめくりの速度も20%速くなったという。価格は399米ドルから少し下がって,359米ドルになった。

 そんなKindle 2を手にした第一印象は,「薄くて持ちやすいし,デザインもすっきりしている」。ディスプレイの表示も見やすく,長時間読んでも目は疲れにくそうだ。今回,追加されたテキストの音声読み上げ機能を試してみたが,音声合成にありがちな不自然な発音が少なく,英語では問題なく使えると感じた。

 好都合なことに,編集部の米シリコンバレー支局に初代Kindleが眠っているという情報をつかんだ。こんな日もあろうということで,支局のP記者が購入しておいたのである。早速,P記者に日本への送付を依頼。初代機,2号機の同時分解の準備は整った。

―― 次回へ続く ――