米Vuzix Corp.の「Augmented Reality Accesory Kit」
米Vuzix Corp.の「Augmented Reality Accesory Kit」
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 “電脳メガネ”という言葉をご存じだろうか。NHKで2007年5月~12月に放映されたアニメーション番組「電脳コイル」において,キー・アイテムとなったものだ。電脳メガネをかけると,現実空間に重ね合わせる形で仮想空間のものが表示される。電脳メガネ自体がネットワークの端末であり,ある意味で究極のモバイル機器とも言える存在だ。

 それを現在の技術で再現したようなものが,Game Developers Conference(GDC)に出展されていた米Vuzix Corp.の「Augmented Reality Accesory Kit」だ。これは同社の既存の眼鏡型ディスプレイ「VR920」に装着するオプションで,外界の情報を外側に付けたカメラで取り込み,ディスプレイに表示している。画像内にマーカーがあると,その場所に仮想的な物体を表示するので,現実と仮想空間が重なって見える。こうした技術は,現実空間を仮想空間の情報で「拡張」するので,「拡張現実(Augmented Reality:AR)」と呼ばれている。

 キットにはマーカーを装備した3次元ポインティング・デバイスも付属する。これを使って仮想空間上に絵を描いたり,仮想的な銃に見立ててシューティング・ゲームをするといったデモをしていた。実際に試してみたところ,カメラが1入力のため,空間の情報が平面的で,いかにもディスプレイの表示といった印象があった。もっとも立体的な空間をコンピュータ上で再現しようとすると,左右の眼の映像を正しく重ね合わせなければならないし,視線に追従する形でカメラを動かさなければならないので,現実的にはかなり難しい。仕方がない面もあるだろう。

 またマーカーの上に表示が出るので,マーカーが隠れてしまうと突然仮想空間上の物体が消えてしまう。操作の途中で突然消えたりするため,違和感が少なくない。こうしたことから,まだ電脳メガネとしての完成度は低いものの,その第一歩を踏み出したという印象は受けた。