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閉塞感? 技術者がやるべきことは,まだまだある

松下電器産業元副社長 水野博之氏

高橋 史忠=日経エレクトロニクス
2009/03/27 18:45
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 「情けないわなぁ」――。

 松下電器産業(現・パナソニック)元副社長の水野博之氏は,国内エレクトロニクス・メーカーの現状を憂い,ため息をつく。「何を作っていいか分からない」「技術の方向性が見えない」という技術現場の閉塞感が,業界を覆う不況より深刻なことに思えるからだ。

 「まだ,たくさんやることはありますよ。家庭の情報化はこれからが本番だから」

 80歳を迎える今もなお,複数の企業で取締役を務めるなど現役を続ける水野氏は,日本メーカーは今こそ家庭の情報化で世界のイニシアチブをとる好機だと叱咤する。

(インタビューは,日経エレクトロニクス創刊1000号記念特集の一環で実施しました。特集誌面と連動した企画サイトはこちら

水野博之(みずの ひろゆき)
1929年生まれ。52年京都大学理学部物理学科卒,松下電器産業に入社。一貫して技術・開発畑を歩み,90年に副社長。米スタンフォード大学顧問教授,高知工科大学副学長などを歴任。広島県産業科学技術研究所所長や,コナミ取締役など複数の役職を兼任している。
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 100年に一度の経済危機なんて,麻生首相もよう言いますな。戦後に私が入社したとき,まだ松下電器は電気コタツを一生懸命作っていた。ソニーだって,生まれたばかり。「日本には自動車産業なんて育たない。米国のビッグスリーを見ろ。せいぜい国内では1社が限度だ」と言われていたんです。

 松下の社員だって,食うのがやっとだった。2000万人が餓死するなんて言われててなぁ。景気がいいとか,悪いとか言っている時代じゃなかった。そこから日本は出発して,たどり着いたんですよ。今の状態まで。

 米国に追い付け,追い越せで仕事をした。今で言う「キャッチアップ・モデル」ですね。常に米国や欧州などの成功パターンが前にあって,それをコピーすればよかった。松下幸之助さんの偉いところは,天才発明家だったにもかかわらず,戦後にキャッチアップに徹したことですよ。約5万店の販売店網まで作って。

 最近は「何を作ったらいいか分からん」と話す技術者が少なくないようだけど,そういう話は私らの時代にはなかった。むしろ,やることが多すぎる幸せな時代だったんでしょうな。そういう状況だから,幸之助さんの経営というのは選択の経営でした。たくさんある技術や商品の候補の中から,どれをどのタイミングで出したら最も効果的か。それを選ぶ直感において幸之助さんは天才やった。

 “これ”と決めたら,松下の総力を挙げてその分野に集中するんですから,それは勝ちますよ。商品を作れば,5万店の販売店網がある。そこで一気呵成に売るわけですから。「いい物を作れば自ずと売れる」とだけ考えていたライバル企業は松下にかなわなかった。キャッチアップに徹し,販売に力を入れたことが,幸之助さんが天才経営者と呼ばれる所以でしょうなぁ。

キャッチアップから抜け出られない日本メーカー

 残念なことに,日本のエレクトロニクス業界では,当時のキャッチアップモデルがいまだに続いている。特にこの10年,「キャッチアップは終わりだ」という掛け声は盛んだったけれど,実際は全く変わっていないんですわ。そこに問題がある。モデルとなる対象が前を走っていた幸之助さんの時代にはキャッチアップがビジネスモデルとして最善だった。だから,その戦略に徹することが功を奏した。でも,日本メーカーは,いつの間にか米国より前に出ていたんですなぁ。

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