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「充放電はわずか12秒」,東京農工大がエネルギー密度3倍の電気2重層キャパシタを開発

2009/03/10 16:57
吉田 勝=日経エレクトロニクス
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蓄電容量と電圧の関係。色分けした面積がエネルギー密度を表す
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エネルギー密度と出力密度の相関を示したラゴーンプロット。
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Li4Ti5O12を担持したナノカーボン・ファイバー。
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ナノカーボンファイバーの拡大顕微鏡写真。管状のナノカーボン・ファイバーの内部および外部にLi4Ti5O12が担持されている。
ナノカーボンファイバーの拡大顕微鏡写真。管状のナノカーボン・ファイバーの内部および外部にLi4Ti5O12が担持されている。
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 東京農工大学大学院は,単位体積あたりのエネルギー密度が20Wh/lの電気2重層キャパシタ「ナノハイブリッド・キャパシタ」を開発した。既存の電気2重層キャパシタ(EDLC)の約3倍のエネルギー密度で,実用化すれば再生エネルギーの蓄電やハイブリッド・カーなどの回生装置としての利用が期待できる。正極は従来のEDLC同様に活性炭だが,負極にLi4Ti5O12(チタン酸リチウム)を用いることによりエネルギー密度を高めた。加えて,Li4Ti5O12を5〜20nm程度の粒径にナノ結晶化してカーボン・ナノファイバに担持させることで,充放電の時間を従来のEDLC以下に短縮している。

 このキャパシタは,充電時にLiイオンと電子が負極に吸着し,さらに電極内に拡散してLi7Ti5012となる。放電時には逆の反応によって電子を放出する。これまでも,負極にLi4Ti5O12を用いることでエネルギー密度を高めたEDLCは報告されていたが,Li4Ti5O12の電気伝導度が低いことと,Liイオンの拡散定数が小さく負極への吸蔵(インターカレーション)が遅いことから,出力密度が極端に小さくなって充放電に時間が掛かるのが課題だった。ナノハイブリッド・キャパシタは,Li4Ti5O12をナノ粒子化して拡散距離を短くすることでLiイオンとの反応時間を従来の1/2000に短縮するとともに,カーボン・ナノファイバーを用いることで電気伝導度を高めた。これによって,従来のLi4Ti5O12を用いたEDLCで1.5分〜1時間程度を要していた充放電が,12秒で済むようになった。これは,負極に活性炭を用いた既存のEDLCの充放電時間(15秒)よりも短い。負極の製造に当たっては,ナノ粒子化したLi4Ti5O12とカーボンナノファイバーに遠心力処理を加えることで,カーボン・ナノファイバーの外部にも内部にも均一にLi4Ti5O12を担持させた。

安全で長期使用が可能


 安全性も高い。負極の電圧が1.55Vと電解液の還元分解電圧よりも高いため電解液のガス化などが原理的に起こらないためだ。大容量のキャパシタとしては,負極にLiイオンをプレドープするLiイオン・キャパシタが実用化されているが,電圧が低下すると電解液がガス化するといった問題があった。サイクル特性も充放電を1万回以上繰り返して性能の劣化がないことを確認しており,信頼性も既存のEDLCと遜色ないとみている。

 今回の開発は,東京農工大学大学院の直井研究室と同大学院の「キャパシタテクノロジー講座」(日本ケミコンの寄付講座)が開発した。製品化に関しては「スケールアップは今後検討するため未定」(日本ケミコン 基礎研究センター機能性材料研究室室長の玉光 賢次氏)だが,「材料コストは既存のEDLCと同程度なので量産できれば十分対抗できるのではないか」(同氏)という。Liイオン・キャパシタのようなプレドープ工程がない「量産性の良さそうな技術」(同氏)である点も,生産性や製造コストの面で有利だとみている。電解液も「負極電位が小さいので,選択の幅は広がる」(東京農工大学大学院教授の直井勝彦氏)としており,イオン液体なども検討したいとしている。

 直井教授らは,かつて負極にRu02(酸化ルテニウム)を用いた大容量キャパシタなどを研究していたが「性能は極めて高いが,材料コストが高過ぎる。Li4Ti5O12なら性能とコスト面から実用レベルで使える」(同教授)。現在は,負極のLi4Ti5O12の割合が50〜70%程度だが,これを80%程度まで高めることでさらなるエネルギー密度の向上が期待できるという。加えて,現在,新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が,カーボン・ナノチューブを使った大容量キャパシタの開発を進めており,日本ケミコンや東京農工大学も参加しているため,今後同プロジェクトへも同技術を展開する予定だという。

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