ディスプレイ分野における国内特許出願ランキング
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有機EL分野における国内特許出願ランキング
有機EL分野における国内特許出願ランキング
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照明分野の累計出願件数
照明分野の累計出願件数
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 光産業技術振興協会の特許動向調査委員会による「平成20年度の光産業特許動向調査報告」が2009年3月5日,都内で開催された。同協会の専務理事である小谷泰久氏によると,光産業分野の市場の成長率は2007年度が2.6%であったのに対し,2008年度は-1.3%だった。「今は,おとなしくして,将来のことを考える時期。特許をどのように生かすかが重要である」と述べた。光産業分野では,2008年度には太陽電池,光通信,ディスプレイ分野が成長した。ただし,ディスプレイ分野は2008年全体を通してみると成長しているが,後半に激しく落ち込んだという。

 今回,同協会は光通信ネットワーク産業,光メモリ産業,ディスプレイ産業,太陽光エネルギ産業,照明産業の5分野における特許出願または登録の件数などを報告した。

 ディスプレイ分野では,キヤノンの太田俊氏が登壇した。特許の調査対象はプラズマ,有機EL,液晶(プロジェクタを含む),CRTである。日本,米国,欧州における公開件数(米国は登録件数),出願人の所在地別を比較した。調査期間は,1999年1月1日~2008年12月31日である。

ディスプレイ分野では,2004年以降セイコーエプソンが単独首位

 ディスプレイ分野での日本で出願公開された特許件数を見ると,2004年以降セイコーエプソンが連続して首位を守っている。2008年の出願件数は864件であり,2位シャープとの差は400件近くある。3位にソニー,4位にエプソンイメージング,5位にパナソニックと続く。2008年の米国における登録特許件数は,1位が韓国Samsung Electronics Co., Ltd.の145件。2位のセイコーエプソンとの差はわずか10件程度である。3位は韓国Samsung SDI Co.,Ltd.,4位は米Microsoft Corp.,5位は半導体エネルギー研究所だった。2008年に欧州で公開された特許件数については,1位がSamsung SDI ,2位がSamsung Electronics,3位がLG Electronics Inc.と韓国企業が1~3位を独占した。日本企業では,4位にシャープ,6位にパナソニック,7位にソニー,8位にセイコーエプソンがランクインしている。日本公開特許,米国登録特許,欧州公開特許のいずれにおいても,2005~2006年を境に件数が増加から減少に転じている。また近年は,船井電機など,これまで出願人ランキングにおいて上位にいなかった企業が登場している。

有機ELはソニーが出願件数を伸ばす

 今回,同協会はディスプレイ分野での注目分野として,有機ELの日本国内特許動向を報告した。2008年の出願件数は,1位がセイコーエプソンの561件,2位がソニーの407件,3位キヤノンの177件,4位が半導体エネルギー研究所の158件,5位がシャープが146件と続く。2008年は,ソニーが出願件数を前年から164件増やしてその差は縮まったが,2003~2007年の間には,1位セイコーエプソンと2位のソニーとの出願件数の差は,2倍以上あった。セイコーエプソンの出願件数のピークは,2005年の860件。それ以降は減少している。出願件数の上位企業の変動は,ほとんどないが,凸版印刷,コニカミノルタホールディング,オプトレックスの件数増加が目立った。

 有機ELに関する出願動向の特徴として,インクジェットに関連した出願が減り,印刷に関する出願件数が増えたことを挙げた。太田氏によると,特許出願の技術分野における「インクジェット」は,有機材料を溶媒に溶かして塗布する方法,「印刷」は,それ以外の版を利用した描画方法などを指している。この出願分野の変化は,凸版印刷の印刷法に関連した成果がまとめて出てきたことの影響が大きいとした。

 2004~2008年におけるインクジェット技術の出願件数は,セイコーエプソンが全体の60%を占めている。一方,印刷技術は,40%近くを凸版印刷が占める。2006年から2007年にかけて,セイコーエプソンによるインクジェットの出願が約150件から100件へと減少している一方で,凸版印刷による印刷の出願件数は,約20件から約65件へと増加している。

 有機ELの材料分野については,ホスト材料,ドーパント材料,蛍光材料,リン光材料について出願人別による出願件数を報告した。これによれば,リン光材料はこれまで上位だったコニカミノルタホールディング,昭和電工,富士フイルムが件数を減らした一方でキヤノン,半導体エネルギー研究所,住友化学,メルクの出願件数が増加しているという。

照明分野では,IT,ディスプレイ企業が上位に

 照明分野の特許出願動向は,住友電気工業の大阪啓司氏が報告した。検索ツールとしてIPCを利用し,検索キーワードは「照明」,「明かり」,「半導体」,「発光ダイオード」,「LED」,「発光素子」などを用いた。検索期間は,1999~2008年9月。累計の出願件数が最も多かったのはセイコーエプソンである。2位にパナソニック,3位にソニー,4位にシャープ,5位にキヤノンと続く。上位集団はIT,ディスプレイ企業が占める。そして第2集団には,日亜化学,豊田合成といったチップやデバイス・メーカーが続いた。

 照明分野では,セイコーエプソンと日亜化学の技術分野別による出願動向を比較した。セイコーエプソンは,「電気照明」に関する出願が28%を占めているのに対し,日亜化学は,「半導体構造」に関する出願が70%を占める。日亜化学の出願動向は,半導体メーカーに多い傾向があるという。

《修正》  光産業技術振興協会から,発言内容の一部に誤りがあったと申し入れがあったため,記事を修正しました。最初の段落の4~6行目の光産業分野の市場の成長率ですが,2007年度は「2.8%」ではなく「2.6%」,また,2008年度は「-1.2%」ではなく,「-1.3%」です。記事本文は既に訂正済みです。