「日本企業は,『ヘルス2.0』で失敗する」――。神戸大学大学院 工学研究科 電気電子工学専攻 教授の塚本昌彦氏は,2009年2月26日に神戸大学で開催した「ウェアラブルと健康」と題する交流会において,このように述べた。
ヘルス2.0は「Web2.0」を模した造語で,業界の一部で使われている。パソコンやWebサービスなどITツールを利用して,ユーザーが自ら健康管理を実施する形態を指す。今後の市場拡大に注目が集まっている分野である。
ヘルス2.0の具体例として挙げられるのは,米Google Inc.が提供する健康データ管理サービス「Google Health」(Tech-On!関連記事)や,米Microsoft Corp.が提供する同様のサービス「Microsoft HealthVault」などである。両者とも,現在は米国のみで利用できるサービスで,これら以外に類似のサービスも,ほとんどは米国企業が中心となって展開が始まっている。
こうした分野に日本企業は参入していけるのか。塚本氏は,「いつものようなシナリオ」として,次の5点を挙げた。
・単なる後追い,良くあるサービス
・センスの悪いサービス
・業界の厚い壁
・悪い政治の後押し
・失敗に対するネガティブなフィードバックによる破綻
その上で塚本氏は,「ヘルス2.0の次を狙え」と指摘した。もっとも,ヘルス2.0だけでは生活習慣の改善には直接は結び付きにくく,逆にインターネットの利用が増えるために外出などの機会が減り,むしろ健康が害される方向になるのでは,といった極論を示した。
そこで必要になるのが,塚本氏の研究テーマでもある「ウェアラブル」や「ユビキタス」といったキーワードに象徴される実世界への展開であるとする。例えば,体にカメラやセンサを装着して日常生活を情報化することである。例えば,携帯電話機やゲーム,音楽プレーヤーなどと融合させてそれを実現することで,より楽しく生活習慣を見直せるのではないかと指摘した。
日経エレクトロニクスは,「ヘルス2.0」などに関連する企画記事を近く掲載する予定です。