開発したミリ波通信用チップセット
開発したミリ波通信用チップセット
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多ビーム切り替え用モジュールなどを構成できる
多ビーム切り替え用モジュールなどを構成できる
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 三菱電機は,ミリ波帯通信システムに向けた送受信チップセットを開発した。GaAs技術を使ったMMICのチップセットで,セラミック基板などに実装すれば小型送受信モジュールを実現できる。2009年度中に通信試験を実施する予定で,その後航空機や列車などの無線通信機器への採用を目指す。

 開発したのは,60GHz帯および44GHz帯に向けたRFトランシーバ回路向けチップセット。パワー・アンプやLNA,ミキサ,スイッチなどで構成する。いずれも,2mm角程度の寸法であることから,RFトランシーバ回路モジュールを実現した際に,数cm角の寸法に納められる。「従来の手法に比較して,容積比1/2にできる」(三菱電機)。アンプやスイッチの組み合わせを工夫すれば,多ビーム切り替え型の送受信モジュールも実現可能だ。伝播環境に応じて複数のアンテナを切り替えて使うことを可能にしている。このほかビーム走査型の構成も採れる。

 GaAs技術を用いることで,パワー・アンプの出力を高めた。例えば60GHz帯の電波を送信する際のパワー・アンプの出力は80mWで,「Si製に比較して約4倍の出力がある」(三菱電機)という。その際の電力付加効率は約20%とした。ミキサの使用周波数に対し,約1/4の局部発振周波数を利用することで,帯域外近傍の不要信号レベルを低減できたとしている。

 ミリ波通信システムとして実際に利用する際には,ベースバンド処理回路部が別に必要になる。三菱電機は今回発表したRFトランシーバ回路用チップセットに加え,ベースバンド処理用ICの開発も進めており,「どちらもあわせて供給できる体制を作る」(三菱電機)としている。どのような変調方式を用いるかについては,明らかにしていない。

 用途としては,まずは航空機や列車などの無線通信システムを挙げる。ミリ波帯は1GHz幅といった広帯域が利用可能なため,瞬時大容量通信が可能であり,そうした特性を生かしたアプリケーションに向けるとみられる。このほかオフィスの無線LANや,家庭内のAV機器間での高速無線伝送用途についても視野に入れている。さらに,自動車のミリ波レーダ用途への展開も想定しているという。