取締役社長の益子修氏
取締役社長の益子修氏
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 三菱自動車工業は,2008年4月~12月の9カ月累計の業績を発表した。売上高は前年同期比15%減の1兆6581億円,営業利益は同62%減の199億円。純損益は前年同期から265億円悪化して48億円の赤字になった。2008年11月から急激に悪化したという自動車市況を反映し,同社は通期(2008年4月~2009年3月)の業績予想を下方修正した。売上高は前回予想から3500億円引き下げて2兆100億円(前年度比25%減)とし,営業利益は前回予想の1/10の50億円(同95%減)とした。純損益は200億円の黒字見込みを600億円の赤字見込みに転換した。

 9カ月累計の自動車の世界販売台数は前年同期比17%減の84万8000台だった。「2008年8月や9月は生産が追いつかない状況だったのに,11月からはほとんど垂直に近い角度で落ち込んだ」(取締役社長の益子修氏)。落ち込みが最も大きかったのは北米市場で前年同期比22%減の9万7000台となった。日本市場も同19%減の12万2000台と低迷。上期は好調だった欧州市場は同8%減の23万2000台。同社が「アジア・その他」に分類する地域では,インドネシアやフィリピン,ブラジルなど一部で成長が続いているものの,地域全体としては同19%減の39万7000台になった。三菱自動車は通期の世界販売台数を前年度比23%減の105万台に下方修正した。全地域で20%前後の前年割れを予測する。

増産向け投資は延期/中止

 同社は「緊急事態への取り組み」として,在庫や固定費の削減策を発表した。通期の世界生産台数は期初計画比で33万台減とし,在庫水準の適正化に努める。ただし,適正化には数カ月を要する見込みという。設備投資も増産に関するものは先送り,もしくは中止する。具体的には,岡崎塗装工場の新設の延期,エンジン生産能力増強の中止,ロシア新工場での中型SUV生産開始の延期を決めた。

 労務費も削減する。役員報酬の減額幅を2009年3月から32~40%程度に拡大するとともに,2009年3月をメドに管理職の賃金を10%程度削減する。一般職の賃金カットに関しても労働組合と協議するとした。賃金単価を抑えても国内正社員の雇用は維持する考え。一方で,期間従業員や派遣社員に関しては契約途中の解雇はしないものの削減に取り組む。益子氏は「苦渋の決断だが,今は生き残りをかけて全従業員で痛みを分かち合うべき時期」と話す。売上高に対する労務費の比率を可能な限り維持し,収益悪化を食い止めるとした。

 デトロイトモーターショーなどのモーターショーへの参加や参加規模も見直す。1983年以来,通算26回参戦,12回の優勝を飾った「ダカールラリー」からも撤退する。益子氏は「『四駆の三菱』の歴史を積み重ねてきた大会だけに残念だが,この状況ではやむをえない」と苦悩の色をにじませた。

「環境をキーワードに需要喚起」

 今後は,電気自動車や低燃費車に経営資源を集める。電気自動車「iMiEV」は2009年夏に国内市場へ投入,2010年以降は左ハンドル市場へも展開していく方針。「『環境』をキーワードに,社会貢献するとともに,自ら自動車需要を喚起していきたい」(益子氏)とした。また,BRICsをはじめとする新興市場での販売拡大を図る。南米市場への輸出本格化や,新型「ランサー」のタイ,フィリピン,中国での現地生産などを予定している。