同社の代表取締役 専務執行役員・CFOである高橋氏
同社の代表取締役 専務執行役員・CFOである高橋氏
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 富士フイルムホールディングスは2008年4~12月期の決算を発表した(発表資料)。売上高は対前年同期比10.9%減の1兆9042億円,営業利益は同53.6%減の825億円,純利益は同71.6%減の295億円で,大幅な減収減益となった。減収の主な要因は,急激な円高やカラー・フィルムおよびデジタル・カメラの売上高の減少,2008年度上期まで順調だったフラットパネル・ディスプレイ(FPD)材料の売上高の減少などという。円高によるマイナス影響は1000億円を上回った。世界経済の後退を受けた販売数量・単価の下落や為替の影響,材料価格の高騰などが減益につながったとする。9~12月期のみを見ると,同社の事業3部門の中で,ドキュメントソリューション部門は黒字,イメージングソリューション部門とインフォメーションソリューション部門は赤字だったとする。

 部門別に4~12月期の業績を見ると,デジタル・カメラやカラー・フィルムなどを手掛けるイメージングソリューション部門は赤字を計上。売上高は対前年同期比24.2%減の3364億円,営業損失は79億円だった。カラー・フィルムやカラー・ペーパーなどの需要減少,デジタル・カメラの競争の激化,円高,材料価格の高騰が収益悪化につながった。デジタル・カメラは,総需要が減ったため市況が厳しくなり,価格が下落しているという。

 FPD材料や携帯電話機用レンズ・ユニットを扱うインフォメーションソリューション部門の売上高は,FPD材料の不振や為替の影響などで大幅な減益となった。売上高は,対前年同期比9.7%減の7379億円,営業利益は同67.1%減の344億円である。FPD材料は2008年度上期まで順調に推移していたが,それ以降は液晶関連市場の急速な悪化に伴い,受注が大幅に減少している。機器メーカーやパネル・メーカー,偏光板メーカーの間に6カ月分以上の在庫が溜まっていたことも受注減少に影響した。同社の代表取締役 専務執行役員・CFOである高橋俊雄氏は,「この在庫は2009年3月~4月中旬くらいに底を打つと予想している。それ以後は需要に見合った形で,出荷できると考えているが,それが以前と比べてどの程度減るかが問題」と話した。ただし,FPD関連市場自体については「まだ伸びる市場と考えている」とした。

 プリンターや複合機などを扱うドキュメントソリューション部門の売上高は,対前年同期比5.3%減の8299億円,営業利益は同2.9%減の589億円だった。

通期予想を下方修正,営業利益は前年同期比85.5%減に

 通期の業績予想は,前回予想から下方修正した。売上高を前回発表から4200億円引き下げ2兆4300億円に,営業利益を1300億円引き下げ300億円に,純利益を700億円引き下げ100億円に変更する。営業利益は前年同期から85.5%,純利益は同90.4%の減少となる見通し。FPD材料や携帯電話機用レンズ・ユニットなどの受注の減少,円高によるデジタル・カメラ事業の収益悪化などが要因という。

 この事業環境の悪化に伴い,FPD材料事業は減産体制の強化,在庫水準の適正化を進める。デジタル・カメラ事業では,現在進行中のコスト改善プランを加速させるほか,独自技術を用いた他社と差異化できる製品を,製品価値の訴求が可能な市場を中心に拡販する。中長期的な対策としては,経費の削減や部材コストの低減,技術開発力の強化などを進め,抜本的構造改革と重点事業の育成を同時に進める。高橋氏は,「2009年度は非常に厳しい期になると見ている。その中でもしっかりと利益を出せるような強靭な企業体制を構築したい」と説明した。