例えば,抵抗膜方式で一般的な4線式のフィルム/ガラス型タッチ・パネルは,安価で実装しやすいものの,透過率が低い,耐久性が低い,という課題がある。最近では,この課題の解決にめどを付けた製品が登場している。一般にタッチ・パネルは透過率が高いほど液晶パネルの画質に対する悪影響を低減でき,耐久性が高いほどゲーム機など,かなり多くの回数をタッチする機器に採用できる。

†フィルム/ガラス型=抵抗膜方式のタッチ・パネルで,上部シートにフィルムを,下部シートにガラスを使ったもの。

 SMKは,従来超えるのが難しいといわれていた「透過率90%の壁」(SMK)を破った製品を開発した。透過率が最大93%と,非常に高いフィルム/ガラス型のタッチ・パネルである。現在サンプル出荷中である(図3(a))。

 今回,同社が透過率を高めることができたのは,透過率の高いフィルムとガラスを使用したため。フィルムは,フィルム・メーカーと共同開発した。

図3 透過率や寿命を改善した製品が登場 SMKは,透過率が最大93%と高い抵抗膜方式のタッチ・パネルを開発し,サンプル出荷している(a)。フィルム/ガラス型で反射率は5%以下,ヘイズ値は標準1%である。富士通コンポーネントは, ITOの代わりに導電性高分子を 利用して耐久性を高めた抵抗膜方式のタッチ・パネルをサンプル出荷中である(b)。ITO品と同程度の透過率を維持しながら,寿命は3倍以上になったという。富士通研究所と共同で開発した。
図3 透過率や寿命を改善した製品が登場 SMKは,透過率が最大93%と高い抵抗膜方式のタッチ・パネルを開発し,サンプル出荷している(a)。フィルム/ガラス型で反射率は5%以下,ヘイズ値は標準1%である。富士通コンポーネントは, ITOの代わりに導電性高分子を 利用して耐久性を高めた抵抗膜方式のタッチ・パネルをサンプル出荷中である(b)。ITO品と同程度の透過率を維持しながら,寿命は3倍以上になったという。富士通研究所と共同で開発した。 (画像のクリックで拡大)

 抵抗膜方式の場合,透明電極を形成した2枚のシート(フィルム,あるいはガラスなど)を,電極側が対向するように配置する。フィルム/ガラス型であれば,上側にフィルム,下側にガラスである。透過率を高めるには,2枚のシートそれぞれの透過率を上げる必要があった。

 抵抗膜方式で透過率とともに,常に求められてきたのが耐久性である。抵抗膜方式は上面のシートがたわみ,下面のシートと触れて導通することで,触れた位置を検知する。入力のたびに上面シートがたわむので,透明電極のITOにクラック(欠陥)が発生しやすい。

 富士通コンポーネントは,従来よりも耐久性を大幅に高めたタッチ・パネルを開発した(図3(b))。ゲーム機などの用途に向ける。耐久性が向上したのは,富士通研究所が開発した導電性高分子をITOの代わりに利用しているためだ。導電性高分子はITOより柔軟なので,上側の透明電極が何度もたわんでも劣化しにくいという。同社が開発したタッチ・パネルを荷重2.45Nで摺動(しゅうどう)した場合,タッチ・パネルの寿命は100万回以上,1.96Nで打点した場合の寿命は1000万回と,通常のITO品に比べて前者で3~5倍,後者で10倍となったという。現在,サンプル出荷中である。