まず,需要の拡大に応じた量産化によって価格は下落する。同時に,タッチ・センサの選択肢が拡大する。タッチ・センサには複数の方式が存在するが,用途などに応じて最適なものを選べるようになる。もちろん,タッチ・センサの技術も進化する。機械式のスイッチやテンキーと異なり,操作している現実感が薄い,もしくは現実感がないというタッチ・センサの課題が,触覚フィードバックなどの技術の導入で改善される。
2011年に約12 億台が搭載
韓国の調査会社であるDisplaybank Co.,Ltd.の調査によれば,タッチ・センサのうち,タッチ・パネルを搭載する機器の出荷台数は,2008年に約4億5000万台だった。それが年平均で42%で成長し,2011年には11億7000万台になる(図2)。
この成長を牽引するのが,携帯機器である。同社の予測によれば,2011年には「携帯電話機やノート・パソコンなどに標準的に搭載されるようになる」(Displaybank社 Analystの湯浅佳樹氏)ため,携帯機器だけでタッチ・パネル搭載機が10億台を突破する。実に,年率平均約50%のペースでの急成長である。
携帯電話機やスマートフォンでは,「現在は高級機種だけが採用しているが,今後は普及価格帯の機種にも載る」(ある国内通信会社)。デジタル・カメラ,UMPC(Ultra-Mobile PC)と呼ばれる小型パソコンやMID(mobile internet devices)と呼ばれる小型のインターネット端末,PNDでも採用が進む。「UMPCとMIDは,ほぼ100%タッチ・センサが載るだろう」(UMPCを手掛ける韓国Wibrain社PresidentのJames Y. Yu氏)。
人間の動作を模した入力体系
機器メーカーがタッチ・センサを採用する利点は三つに集約される(図3)。先述した(1)使い勝手の向上のほかに,(2)新機能を追加できる,(3)デザイン性が向上する,である(図3)。
タッチ・センサで使い勝手を高めることができるのは,「人間の動作を操作体系に組み込むことが可能であるため。ユーザーが初めて使う機器でも,すぐに使えるように設計できる」(電子機器のユーザー・インタフェースのデザインを手掛ける米Cooper社Director of Interaction DesignのDave Cronin氏)という。
例えば,タッチ・センサならワンセグのチャンネルを切り替えたり,複数の写真を次々に見たりする際,あたかも指でページをめくるように画面をこすって操作するユーザー・インタフェースを設計できる。携帯電話機では,ソフトバンクモバイルの「921SH」(シャープ製)やNTTドコモの「HT1100」(台湾High Tech Computer(HTC)社製)などは,こうしたユーザー・インタフェースを備える。