カネカは,同社が開発した変換効率12%の薄膜太陽電池の生産能力を増強すると発表した(発表資料)。現在の生産能力から80MW増強し,150MWに引き上げる。同社の100%子会社であるカネカソーラーテックに新しい設備を設置する。投資額は100億円強。独自開発した設備の費用低減や成膜技術による製造ラインの生産性向上,使用部材のコストダウン,基板の大面積化などによって,製造コストを1W当たり100円まで引き下げるメドがついたことから,増産を決めた。

 カネカの薄膜太陽電池は,アモルファスSiと多結晶Siの間に透明な中間層を積層する構造。透明中間層で,赤外線から可視光線まで幅広い波長の光を効率よく取り込むことによって,変換効率を上げている(Tech-On!の関連記事)。 カネカソーラーテックは,この薄膜太陽電池セルの商業生産を2008年4月に開始している。

 カネカは,カネカソーラーテックを実証プラントとして技術を確立し,さらなる生産能力拡大を目指す。これに伴い,新しい生産拠点を新設する予定。市場動向を見極めながら,海外を含めて立地を検討するという。最初に検討を開始するのは欧州拠点で,200MW程度の生産規模を考えているとする。カネカは,2015年をメドに生産能力を1GWまで段階的に引き上げたい考え。

 加えて,カネカは太陽電池事業の事業方針を明らかにした。今後は,欧米で大規模地上設置による電力供給用途,国内で新築住宅用途の事業拡大に注力するという。さらに,太陽電池技術の確立に向けて,「薄膜研究所(仮称)」の設立準備を開始した。同研究所では,次世代の高効率ハイブリッド・セルの研究開発や有機EL技術の応用による有機薄膜太陽電池の開発を目指す。