このトランジスタのイメージと動作データ(IBM社提供)
このトランジスタのイメージと動作データ(IBM社提供)
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 米IBM Corp.は2008年12月19日,炭素材料の一種であるグラフェンを用いたFET(field effect transistor)で,GHz台の周波数での動作を確認したと発表した(発表資料)。ゲート長が150nmの場合の遮断周波数は26GHzである。今後,ゲート長をより短くすることでテラヘルツ(THz)台の動作とキャリア移動度2000cm2/Vsの実現も可能という。

 グラフェンは,炭素原子が2次元の網状につながった構造の材料。この材料をFETの半導体として用いている。

 具体的なFETの構造はまず,Si基板上に300nm厚のSiO2層を形成し,そこにグラフェンを1層分載せている。その上にソース電極とドレイン電極を形成後,Al2O3の酸化物の層を12nmの厚さにALD(atomic layer deposition)で形成する。さらにその酸化物層の上にゲート電極が載っている。ゲート電極がソース電極とドレイン電極と同じ側にある,トップ・ゲート構造である。

 動作性能は,ゲート長に大きく依存する。ゲート長が500nmの場合,遮断周波数は3GHzだが,ゲート長を150nmに縮めると遮断周波数は26GHzにあがる。論文では,得られたデータの範囲で,遮断周波数がゲート長の2乗に反比例することを確認したとしており,それをゲート長50nmに当てはめると,遮断周波数は数百GHz台とTHzに近づく。