【図1】「今年のロボット」大賞を受賞した「Omnibot 17μ i-sobot」(タカラトミー)
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【図2】最優秀中小・ベンチャー企業賞の「自動ページめくり器『ブックタイム』」(西澤電機計器製作所)
【図2】最優秀中小・ベンチャー企業賞の「自動ページめくり器『ブックタイム』」(西澤電機計器製作所)
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【図3】審査員特別賞の「食の安心・安全に貢献する田植えロボット」(農業・食品産業技術総合研究機構 中央農業総合研究センター)
【図3】審査員特別賞の「食の安心・安全に貢献する田植えロボット」(農業・食品産業技術総合研究機構 中央農業総合研究センター)
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【図4】「応用分野の広がりが見られた」と講評する審査委員長で工学院大学学長の三浦宏文氏
【図4】「応用分野の広がりが見られた」と講評する審査委員長で工学院大学学長の三浦宏文氏
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 経済産業省は「『今年のロボット』大賞2008」の優秀賞(関連記事)8件の中から,「今年のロボット」大賞,最優秀中小・ベンチャー企業賞,審査員特別賞など5件を選定,発表した。「今年のロボット」大賞は「Omnibot 17μ i-sobot」(タカラトミー)が受賞(図1)。小型・軽量でありながら17個ものサーボモータを搭載する一方で,約3万円という低価格で供給,全世界で5万台を販売して市場を拡大したことが評価された。最優秀中小・ベンチャー企業賞は「自動ページめくり器『ブックタイム』」(西澤電機計器製作所),審査員特別賞は「食の安心・安全に貢献する田植えロボット」(農業・食品産業技術総合研究機構 中央農業総合研究センター)が選ばれた。

 Omnibot 17μ i-sobotの受賞について,タカラトミー代表取締役社長の富山幹太郎氏は「タカラとトミーが2005年に合併した後に共同開発した,実質上の第1号製品。トミーの技術力とタカラのマーケティング力を合わせた製品で受賞することができ,非常に励みになる」とコメントした。

 最優秀中小・ベンチャー企業賞の西澤電機計器製作所は,テスターなどの計測機器のメーカー。「第2の柱として医療,福祉関連製品を立ち上げたい」(同社社長の西澤泰輔氏)と考え,4年間かけて開発し,2005年2月に発売したのが自動ページめくり器。身体に不自由がある人でも読書できるようにするための装置で,ページを1枚浮かせて細い板をページの下に入れ,めくるもの。大きな押しボタン1個で操作可能にしたり,息の吹き入れ・吸い出しで動作するスイッチで操作したりといった,さまざまな状況に合わせる工夫を施している。「最初に開発したものはゴツゴツしていた。実際のユーザーの意見を聞くことで,徐々に形になってきた」(同氏)という(図2)。

 審査員特別賞の「田植えロボット」は,人間が運転する田植え機をベースに改造して作製したロボット。水田をGPS(Global Positioning System)で計測して設定したコース沿いを走行しながら田植えをするもので,30アールの水田での田植えを無人で50分で完了できる。まだ技術開発中だが,すでに人手と同程度の品質の田植えができるという(図3)。

 日本機械工業連合会会長賞は「第10世代液晶ガラス基板搬送ロボットMOTOMAN-CDL3000D」(安川電機)が受賞。液晶パネルだけでなく,太陽電池の製造設備への応用も期待されている。6tもの巨体であるため,表彰式の展示会場へは持ち込めなかった。中小企業基盤整備機構理事長賞は「ロボットを活用したエンジニア育成ソリューションZMP e-nuvoシリーズ」(ゼットエムピー)。技術者育成用のロボット教材として,同社の開発ノウハウを体系化している点で技術者育成のニーズに合っていることが評価された。

 「本年は農業,サービス業,ホビー,災害対応などさまざまな分野で,さまざまな工夫を凝らしてロボットが実用化されていることを感じた」(審査委員長で工学院大学学長の三浦宏文氏,図4)と,応用分野の広がりが目立った。特に審査員特別賞になった田植えロボットについては「第1次産業のロボット化は非常に重要。細かい作業をきちんとこなして,安全で安心なものを造っていこうという姿勢は日本にしかない。それだけの幅広い技術を持っているのも日本だけ」(審査員で国立科学博物館理工学研究部研究主幹の鈴木一義氏)と評価された。

 応募されたロボットは研究開発中のものも多く,同時に将来性を期待させるものもあったという。三浦審査委員長は総評の発表時に「本年は選にもれたロボットでも,次回以降受賞する可能性を感じた」と述べた。

 受賞ロボット(MOTOMAN-CDL3000D以外)は2008年12月19日から3日間,東京・北青山のTEPIAで一般公開される。

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