世界市場で戦うメーカーと日本市場で戦うメーカーとの差は,例えば携帯電話機の出荷台数を見れば一目瞭然だ。2005年に年間8億台以上が売れた世界市場に対して,日本市場では4332万台。世界市場で5%のシェアを獲得するだけで,国内の年間販売台数と同じ数量の販売が見込める。

 実際,世界の携帯電話機市場で,高いシェアを獲得しているNokia社や米Motorola,Inc.,Samsung社は,年間に1億~2億台以上の製品を出荷している(図2)。対照的に,日本市場に重点を置く国内勢は,トップ・シェアのメーカーでもたかだか1000万台を出荷しているにすぎない。

図2 数量が稼げる世界市場 2005年の世界の携帯電話機販売台数は8億1660万台だった。シェア上位3社はNokia社,Motorola社,Samsung社で,販売台数はそれぞれ2億6561万台,1億4492万台,1億375万台である。一方,日本国内における携帯電話機販売台数は4332万台。パナソニックモバイルコミュニケーションズとNEC,シャープが上位を占めた。各社の日本国内における販売台数はそれぞれ,753万台,731万台,709万台である。世界市場で覇権を争う端末メーカーとの販売台数の差は歴然としている。なお,NECの場合,海外での販売台数を計上しても約1000万台である。グラフはGartner社およびIDC社のデータを基に本誌が作成。
図2 数量が稼げる世界市場 2005年の世界の携帯電話機販売台数は8億1660万台だった。シェア上位3社はNokia社,Motorola社,Samsung社で,販売台数はそれぞれ2億6561万台,1億4492万台,1億375万台である。一方,日本国内における携帯電話機販売台数は4332万台。パナソニックモバイルコミュニケーションズとNEC,シャープが上位を占めた。各社の日本国内における販売台数はそれぞれ,753万台,731万台,709万台である。世界市場で覇権を争う端末メーカーとの販売台数の差は歴然としている。なお,NECの場合,海外での販売台数を計上しても約1000万台である。グラフはGartner社およびIDC社のデータを基に本誌が作成。 (画像のクリックで拡大)

 この結果,今では世界市場で上位のシェアを持つ端末メーカーと,日本の端末メーカーのコスト競争力は大きく差がついてしまった。「Nokia社の部品調達能力には脱帽する。我々の事業規模では,あれほど強気な交渉はとてもできない」と,国内の携帯電話機メーカーに勤務する技術者は白旗宣言をする。

いずれは攻め込まれる

 現在のところは世界第2位の市場規模を持つ日本市場だけを土俵にしていても,しばらくはその恩恵にあずかることはできる。しかし,既に2005年から人口の減少期に入った日本では,将来を見通したときに市場の大幅な拡大は見込めない。しかも,米Dell Corp.が国内のパソコン業界を席巻したように,世界市場で競争力を高めたエレクトロニクス・メーカーが,やがて日本市場に攻勢をかけるようになる。

 国内市場にばかりこだわるメーカーは,これに太刀打ちできそうもない。2006年に入って,NTTドコモとボーダフォンが相次いで,韓国メーカーの携帯電話機を日本市場で投入することを発表したのは,まさにその兆候といえる。

勝負はこれから

 世界戦に挑むエレクトロニクス・メーカーにとって,最大の焦点がBRICs市場の攻略であることは間違いない。