日本原子力研究開発機構と神戸製鋼所は共同で,オーステナイト系超高純度ステンレス合金「EHP」(Extra High Purity)の製造技術を開発した。主要不純物を100ppm以下に抑制したため,クロムとニッケルの含有量を高めたオーステナイト系ステンレス鋼が本来備える「耐食性」「耐放射線性」「機械的特性」を同時に発現させることができたという。

 この結果,例えば原子力発電システムに適用した場合,寿命を約3倍に延ばせるとみている。原子力発電システムに使うステンレス合金は,放射線による劣化や局部腐食,外部環境影響による割れといった経年劣化要因によって使用期間が制限されていた。また,EHPは溶接性に優れ,共材溶接(溶接材料に母材と同じ材料を使う溶接手法)が適用できるので,溶接部にも母材と同じ性能を付与できる。また,水素脆性を起こしにくいので,将来のエネルギとして期待されている水素の製造設備向け材料としても適している。

 現状は製造技術を確立し,鋼種開発を終えた段階。5年後を目標に商用生産を目指している。価格は,現在の原子力発電システム向けステンレス合金の2~3倍程度と試算している。なおEHPは,文部科学省が進めている「原子力システム研究開発事業」の一環として開発した。