図1 デモの様子。左側がHDMIケーブルで伝送した場合,右側がUWBで伝送した場合の映像である。右側にある白いボックスが受信装置である。
図1 デモの様子。左側がHDMIケーブルで伝送した場合,右側がUWBで伝送した場合の映像である。右側にある白いボックスが受信装置である。
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図2 チップセットの構成
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図3 「ZeroWire 2.0」の参照ボードの構成
図3 「ZeroWire 2.0」の参照ボードの構成
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図4 「ZeroWire 2.0」の参照ボード
図4 「ZeroWire 2.0」の参照ボード
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 米TZero Technologies,Inc.は,UWBを使った同社の映像伝送技術「ZeroWire 2.0」を利用し,1080p,60フレーム/秒,24ビット・カラーの映像を伝送するデモを披露した(図1)。併せて,同技術対応の参照ボードも展示した。TZero社は同技術を第2世代と位置づける。第1世代では,24ビット・カラーで,1080p,30フレーム/秒,あるいは1080i,60フレーム/秒が限界だったという。今後は第2世代技術の普及に力を入れる考え。第一世代は既に日立製作所の液晶テレビ「Wooo UTシリーズ」に採用済みである(Tech-On!関連記事)。「2009年第2四半期(4~5月ごろ)には第2世代技術を採用した製品が登場するだろう」(TZero社)とする。

H.264を採用

 ZeroWire 2.0の参照ボードは,UWB向けトランシーバLSIと,ベースバンド処理およびMAC層回路LSIから成るTZero社のチップセット「TZC7200」を利用する(図2)。UWB規格の一つ「WiMedia v1.2」に準拠している。伝送時には映像データを圧縮して伝送する。1080p,60フレーム/秒,24ビット・カラーの映像を伝送するにあたり,符号化方式にMPEG-4 AVC/H.264(以下H.264)を採用した。参照ボードでは,米Cavium Networks社が手掛けた符号化/復号化LSIを採用した。従来は米Analog Devices社のLSIを採用し,JPEG 2000を利用していた。

 H.264のプロファイルなどによるが,実効的な伝送速度は「最大でも80M~100Mビット/秒ほど」(同社)。最大300Mビット/秒の伝送速度に対応するという。データ伝送速度によるが,受信範囲20m以上をうたう。アンテナも変更した。今回,太陽誘電の内蔵アンテナを利用したが,第一世代では外付けアンテナを利用していた。
 
 実演では,HDMIケーブルで伝送した映像と,UWBで伝送した映像を比較し,映像に遅延がない点を強調していた。遅延時間は16ms以下で,「1080p,60フレーム/秒で伝送しても1フレームの遅れもない」(同社)とする。具体的には,プレイステーション3からHDMI端子を介して出力した映像データを2分割し,一方をそのままテレビのHDMI端子に入力する。もう一方をUWBの送信装置に入力し,テレビに外付けした受信装置に伝送する。

コストも低減

 第一世代に比べてコストを低減した点も特徴とする。例えばZeroWire 2.0の参照設計を外付けの送受信装置に適用する場合,送信側,受信側それぞれで50米ドル未満,計100米ドル未満で提供できるという(図3,4)。第一世代の技術では,送信あるいは受信の片側だけで「ローエンド品でも約75米ドル必要だった」(TZero社)という。機器に内蔵する場合は,さらに安価にできるとみる。機器がH.264の符号化/復号化機能を備えていれば,参照ボードに含まれるH.264の符号化/復号化LSIを不要にできるからだ。

2009年の資金はメド

 ここ最近,UWBをめぐる状況は厳しく,資金繰りの悪化で関連企業の倒産などが懸念されている。こうした状況に対,TZero社は,同社のUWB技術の優位性を協調し,「我々は問題ない」と主張する。同社は,2008年2月にベンチャーキャピタルから1800万米ドルの追加出資を受けており,少なくとも「2009年は資金不足にならないだろう」(同社COOのBernard Glasauer氏)とする。