80℃2時間で硬化させた硬化物を測定
80℃2時間で硬化させた硬化物を測定
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 三井化学は,屈折率が1.65と高い,1液熱硬化型の透明エポキシ樹脂を開発することに成功した。有機ELや白色LEDなどの発光素子のシール材として使えば,エネルギー効率を向上できるという。

 有機ELなどの発光素子の屈折率はシール材より高いために,「スネルの法則」により,二つの媒質間で光は屈折し,屈折率差が大きいほど全反射する光が多くなり,エネルギー効率を下げる。シール材として使われる既存の透明エポキシ樹脂は,屈折率が1.5程度である。そこで三井化学は,シール材の屈折率を1.65と発光素子に近づけ,全反射する光を少なくしてエネルギー効率を上げることを可能にした。

 エポキシ樹脂の屈折率を上げることができたのは,エポキシ樹脂の分子構造の中にチオール化合物を用いたからだと言う。チオール化合物には分極率が高い硫黄原子を含むために屈折率が高くなる。通常,エポキシ樹脂の屈折率を上げる方法としては,ハロゲン化したり,高屈折率の微粒子を分散させる方法があるが,前者は着色,後者は白化などの問題があった。今回開発したチオール化合物を含む透明エポキシ樹脂「XET」は,これらの問題がなく,透湿度や吸水率,接着強度などシール材として十分な特性を持つ(表)。また,チオール化合物はエポキシ樹脂との反応性が高いために2液硬化型として使われることが多いが,同社は触媒系を最適化して経時粘度変化を制御して,12時間の使用時間を可能にした。

 同社は,研究内容の詳細を2008年11月27日~28日に広島で開催される「第17回ポリマー材料フォーラム」で発表する。