図◎三菱自動車「i MiEV」
図◎三菱自動車「i MiEV」
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 地球温暖化に対する意識の高まりや原油価格の高騰をきっかけに、ハイブリッド車や電気自動車、燃料電池車の実用化の機運が高まっている。

 例えば、三菱自動車は電気自動車の市場投入を富士重工と競い合っており、2009年夏にも「i MiEV」(図)の一般向け発売を開始する予定だ。現在、i MiEVは電力会社数社や神奈川県警などにおける実証実験が進められている段階である。

 そんな中、電気自動車の普及に一役買いそうなのが、三菱自動車や富士重工などの既存の大手自動車メーカーだけではなく、近年各地で次々と勃興しつつあるEVベンチャー企業だ。

 まず日本国内では、オートイーブィジャパンやCQモーターズ、ゼロスポーツなどのベンチャー企業が既存車種をベースとした電気自動車を中心に開発、販売している。

 北米でも、Tesla Motors社やAmerican Electric Vehicle社、Myers Motors社など新興企業が次々と創業、富裕層向けのスポーツカーや街乗り向け乗用車、一人乗り乗用車など様々な電気自動車を開発、販売を開始している。また、ドイツのIT企業、SAP社の前社長のシャイ・アガシ氏が独特なビジネスモデルを考案、出身国のイスラエルやシリコンバレーのベンチャーキャピタルなどを中心に2億ドルを調達し、米国でBetter Place社を立ち上げたことが大きな話題となった。

自動車産業にもパソコンや携帯電話と同じような業界変革が起きるか

 このように、電気自動車の開発に既存の自動車メーカーだけでなくベンチャー企業が参入する理由の一つは、電気自動車の構造にある。ガソリンや軽油などの化石燃料を燃焼させる従来の自動車は、元来エンジンや変速機など、複雑で非常に多くの部品を必要とする造りになっている。そのため、大きな既存のメーカーでなければ、すべての部品を設計、開発、製造し、1台の自動車として完成させることは困難である。

 エンジンや電装系などの部品を開発、製造して複数の完成車メーカーに納入するメーカーもあるが、おおむねね大手自動車メーカーごとに系列化されている。このため、現在の自動車業界では、パソコン業界に見られるような構成要素ごとに分化が大きく進んだ水平分業はあまり見られない。

 ところが、モータとインバータ、電池が主要な構成要素となる電気自動車の場合、構造が比較的簡単である。このため、各部品を各メーカーから調達して車体に組み立てれば、従来の自動車に比べて容易に造れるのだ。

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