日立らが希土類磁石を使わないモータを試作,効率は5ポイント向上
日立製作所と日立産機システムは,鉄心にアモルファス金属を用いたモータを試作した(発表資料)。ネオジム(Nd)やディスプロシウム(Dy)といったレア・アースを使った磁石(希土類磁石)を使わずに,モータの効率を高められるのが特徴である(図1,2)。エアコンなどに使われるような,出力150Wのモータを試作したところ,希土類磁石を使う同社従来品に比べて,効率が約81%から約86%と5ポイントほど向上したという。アモルファス金属を利用したモータは,幅広い分野での利用を想定している。例えば,産業機器や家電,自動車などの分野である。
現在,全電力消費の約半分をモータの消費電力が占めており,省エネルギー化にはモータの高効率化が欠かせない(図3)。そこで,モータには高い特性を備えた希土類磁石が使われている。中でもNd-Fe-B(ネオジム─鉄─ホウ素)系磁石(いわゆるNd系磁石)が一般である。高温状態での特性を保つため,Nd系磁石にはDyが添加されている。
希土類磁石を使えばモータの効率は向上するものの,原料に使うレア・アースの価格が高騰しており,大きな課題となっている。「現在は,以前の急騰した時期よりも価格が落ち着いてきているが,今でも高い」(日立製作所)という。例えば,2004年と2008年9月で1kg当たりの価格を比較すると,Ndは約3倍の30米ドル,Dyは5倍近くの155米ドル(同)に高騰している。価格が高止まりしている一因は,レア・アースの90%ほどを中国が握っているためである。中国が生産国から消費国へと変化しており,レア・アースが高騰している。そこで日立らは,レア・アースを使わないモータの研究開発を進めてきた。
損失が少ない
今回,Nd系磁石を使わなくてもモータの効率が向上したのは,アモルファス金属自体の損失が小さい上,新たなモータ構造を開発したためである。
モータは,鉄心にコイルを巻いて電流を流して電磁石にし,回転子となる永久磁石を回してモータの回転力を生み出す(図4)。従来は,鉄心に電磁鋼板を,回転子にNd系磁石を利用している。試作モータでは,鉄心にアモルファス金属を使うことで,回転子にフェライト磁石を利用できるようにした。アモルファス金属は,電磁鋼板に比べて透磁率が約10倍高く,かつ磁性材料によるエネルギー損失(鉄損)が1/10ほど小さいためである(図5)。鉄心の透磁率が大きいほど,弱い磁石でも高い磁束密度を実現できる。
鉄心の構造を変更
アモルファス金属の最大の課題は,電磁鋼板に比べて薄くて硬く,切断や切削などの加工がしにくい点である。電磁鋼板の場合,損失につながる渦電流の発生を防ぐために,0.35〜0.5mmほどに薄くした電磁鋼板を積層して鉄心を構成する。一方,アモルファス金属は厚さ25μmと薄い。硬さに関しては,ビッカース硬さ(HV)と呼ばれる硬さの指標で比べると4倍以上になるという。
そこで,鉄心の構造とその作製法を変えた。アモルファス金属を用いた変圧器で培った技術を応用し,薄いアモルファス金属を幾重にも巻いて鉄心を形成している。アモルファス金属を利用するとともに,3次元の磁界解析を利用してモータ構造の最適化も図った。従来は2次元での解析だった。
今後は,まず産業機器での用途に向け,3年間で実用化するのが目標である。さらなる信頼性向上と,製造コストの低減などを図るという。用途拡大に向け,モータの高出力化も狙う。「10kW級のモータも作製できるだろう」(日立製作所)とみる。



















