続いて,筐体裏面を7カ所で固定しているY字型の三つ又ネジを外す。すると,メイン・ボードがあっさりと姿を現した。

面積に余裕あり

 「スカスカだなぁ」

 「かなり余裕がありますね」

 技術者が口々に漏らしたのは,メイン・ボードの構成が思っていた以上に単純だったことに対する驚きの声である。ほとんどの部品はメイン・ボードの表側に実装してあり,液晶パネルを重ねる裏側には操作用のスイッチやコンデンサなどのチップ部品があるばかり。表側にしても,部品がある程度の密度でひしめき合っているのは向かって左だけで,それ以外には何も実装されていない領域が目立つ。携帯電話機のメイン・ボードなど,高密度実装を施したプリント配線基板を見慣れている技術者たちの目には,新鮮に映るほどだった。

  このメイン・ボードの単純さからは,任天堂の設計思想が強く伝わってきた。ニンテンドーDSの価格は1万5000円(米国では149.99米ドル)。2枚のディスプレイや高性能のマイクロコントローラを搭載しながら,ゲームボーイアドバンスSPの発売時の価格(1万2500円)に近づけるためには,コスト低減に向け徹底した対策が必要だったのだろう。単に部品点数を削減するだけでなく,主要部品を片面の狭い領域に集中させたのは,マウンタの移動距離を短くして実装にかかる時間を短縮する効果までを期待してのこととみられる。

デュアル・コアが姿を現す

 メイン・ボードの中央には,専用のゲーム・カートリッジを挿入するソケットが取り付けてある。はやる気持ちを抑えながら,技術者たちはその取り外しに着手する。手にしたハンダごてを器用に扱い,プリント配線基板に取り付けられたソケットをゆっくりとはがす。